投資対象を頻繁に入れ替える人もいるが……

さてDC(確定拠出年金)は、国民年金や厚生年金の公的年金に対して、自ら拠出した分は総額自身が享受できる私的年金制度。わかり易く「じぶん年金」と呼びましょう。そして恩典は運用益に対する非課税のみならず、年間拠出金額の所得控除、更には受取時にも税制上のメリットを得られるすぐれもの制度です。が、あくまでもその名称の通り老後に向けた年金制度ですから、60歳以前には途中資金化することができません。

その制度目的は、現役時代を通じて長期積立投資を継続して老後資金を育てていくことにあるからです。

ところが、制度主旨は資産形成をどっしり長期で叶えてくれる投資信託を毎月積み立てながら長期保有することがメインストリームであることは間違いないですが、投資対象については随時入れ替えが可能な仕組みであるため、頻繁にそれを行っている人もけっこう見受けられるのです。

最近よく寄せられる質問

ちなみに最近よく受けるのが、「iDeCoでかなり大きな利益が出ているが、利確すべきですか?」という類の質問です。要するに昨年の急上昇相場の恩恵から、「iDeCo」で投資している投信が値上がりして含み益が増えたから、一旦リカク(利益確定の売却)して、メニューの中にある銀行預金に移し、次にまとまって下落したところで買い戻せば賢い運用になる、と考えているわけですね。

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こうしたアクションは「iDeCo」の制度主旨に背いて、相場の短期的上下を予測した売買を目的とする「マーケットタイミング取引」そのものと言えましょう。要は自ら相場の値動きを予測して当てにいく、投機的行為に陥っているのです。

「まだはもう、もうはまだ」という短期的なマーケットの特性を捉えた格言があります。みんながまだ上がるとこぞって能天気になっている時が足元の損場のピーク。そしてみんながもう天井だと専ら弱気が支配し始めた時はまだ上昇途上だよといった意味で、目先の値動きは必ずしもみんなが思っている通りには動かない、という至極当然の心理を表現していますね。逆に下落相場の局面でも同様に、相場が底を付けたところで買おうと思ったって、いざ下落が続く状況下ではもっと下がるのでは、という恐怖心が買う勇気を駆逐してしまうものなのです。