韓国判決は「主権免除」の解釈自体をねじ曲げている

日本政府は、この主権免除の原則から韓国の裁判には応じてなかった。このため、訴訟では韓国の裁判所が主権免除を認めるかどうかが最大のポイントだった。結局、ソウル中央地裁は太平洋戦争中の日本の行為が、いかなる逸脱も許されないとされる国際法上の強行規範に違反していたと主張し、主権免除を否定した。

しかし、第2次世界大戦中のドイツ軍の行為に関してドイツとイタリアが争った2012年のICJ(国際司法裁判所)の判決では、ドイツが強行規範に違反していたとしても主権免除を否定する理由に相当しないという判断が示されている。韓国の判決は、主権免除の解釈自体をねじ曲げている。

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国際司法裁判所が設置されているオランダ・ハーグの「平和宮」

さらにソウル中央地裁は判決の仮執行も認めている。このため原告側は韓国内の日本政府の財産差し押さえ申請ができる。もし差し押さえが強行されれば、日本政府は強い対抗措置をとる方針だという。

文在寅政権が「被害者中心主義」を掲げ、日韓合意を破棄した

慰安婦や徴用工など日韓の戦後補償については、1965年の日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的」に解決済みだ。なかでも慰安婦問題については、日本は2015年、保守の朴槿恵(パク・クネ)政権と「最終的かつ不可逆的な解決」で合意している。しかも日本政府は「解決済み」としながらも、「女性のためのアジア平和国民基金」(1995年設立)や、日韓合意に基づく韓国の財団を通じて元慰安婦らに現金を支給してきた。歴代の首相も謝罪を重ねてきた。

しかし、2017年に発足した左派の文在寅政権が「被害者中心主義」を掲げ、「当事者の意思を反映していない」と合意を破棄するとともに財団も解散した。

一方、徴用工訴訟では被告の日本企業の敗訴が確定し、元徴用工ら原告が韓国内にある日本企業の資産を差し押さえ、売却の手続きを進められる事態にまで発展。今回の慰安婦判決と同様、文政権は「司法を尊重する」と徴用工問題に応じず、日韓関係悪化の大きな要因となっている。