5月にはスコットランドとウェールズで地方選

新型コロナウイルスの感染対策が効果的に機能した国は非常に少ない。ファクターX仮説が物語るように、感染者の度合いになぜ地域差が生じるのか不明な点も多い。しかしながら新型コロナウイルスへの対応で、政権の支持率が上昇した国もあれば低下した国もある。欧州では前者の典型がドイツであり、後者は英国となる。

ジョンソン政権は当初、新型コロナウイルスの感染拡大に対して集団免疫路線を採用した。その後、感染の爆発を受けて厳しい制限措置に移行、4月には首相自身も罹患して一時入院した。その頃までは有権者も首相に同情していたが、自身の元側近カミングス氏の問題行動(都市封鎖中の長距離移動)などを受けて支持率は急落した。

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こうした過程を経て英国の有権者は、ジョンソン政権による新型コロナウイルス対策に関して強い不信感を持つに至った。EUとのFTA締結といった生半可な成果では、政権の支持率を押し上げることなどできないわけだ。以上のような政治状況の下で、5月6日には北部スコットランドと西部ウェールズで議会選が行われる。

英国からの独立志向が強いスコットランドでは、20年1月のEU離脱を前後して与党であるスコットランド国民党(SNP)の支持率が50%後半をキープ、このまま行けば大勝すると予想される。SNP党首でもあるニコラ・スタージョン首相はジョンソン政権の許可にかかわらず、英国からの独立の是非を問う住民投票を実施する可能性に言及している。

独立志向が相対的に弱いウェールズでも、保守党は支持率で苦戦している。もともと労働党が強い土地柄である一方、前回19年12月の総選挙では保守党が躍進した。しかしその後は新型コロナウイルスの感染対策に対する不満から保守党の支持率は25%を割り込み、一方で労働党の支持率が40%程度まで回復している。

2024年の総選挙で保守党が大敗するシナリオ

素直に考えれば、余程のことがない限りスコットランドとウェールズの地方選で保守党は議席を減らすことになる。とりわけスコットランドでは、住民投票の実施に向けた機運が高まり、ジョンソン政権との間で軋轢が生じることになるだろう。かつてスタージョン首相が述べたように、最短で今秋の住民投票の実施も視野に入る。

さらに22年5月には北アイルランドでも地方選が行われる。その北アイルランドでも、保守党と近い民主統一党(DUP)の支持率が徐々に低下している。ルシードトークがベルファストテレグラフの依頼で20年10月頭に実施した最新の世論調査での支持率は23%と、議会第2勢力のシンフェイン党の24%を遂に下回った。