女性の便秘のメカニズム
便秘診療をしていると女性と男性は全然違うと感じることが多々あります。便秘外来を担当していると、同じ便秘患者でも男性は寡黙な人が多く、女性は自分の症状以外のこともたくさんお話してくれる人が多いと、常々感じています。
便秘の原因に話を戻すと、女性は男性とは異なり、女性ホルモンのせいで便秘になる人が多いのです。
女性は12歳前後で月経が始まり、50歳前後で閉経を迎えるのが日本人の平均です。月経とは妊娠に備えるために子宮が変化していく過程のことです。妊娠しやすくするために、子宮内膜が分厚くなるのですが、妊娠が成立しなかったとき、分厚くなった内膜が剥がれ落ちて、出血します。それが月経です。月経を調節するのに大きく関わっているのが、卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つの女性ホルモンです。
月経周期が影響
便秘に関係するのは黄体ホルモンです。黄体ホルモンの作用は妊娠の準備のほか、色々な作用があります。例えば黄体ホルモンは体温を上げる作用があります。黄体ホルモンが分泌されている時期、すなわち黄体期は、だいたい0.3~0.6℃体温が上がります。このような体温変化から排卵のタイミングを予測して、妊娠しやすい時期の見当をつけることは、女性には一般的でしょう。
その他、黄体ホルモンの作用として、水分を体の中にため込む作用や腸の動きを抑える作用があります。この作用のために便の水分が少なくなり、かつ腸も動かないので、便が出にくくなるのです。
月経前10日間ほどは黄体ホルモンのために便が出にくい環境になっています。月経が始まる頃には黄体ホルモンの働きが弱くなりますので、水をため込む作用、腸の動きを抑える作用も弱くなります。
そうすると今度は便が出やすくなるので、人によってはお腹を下しやすくなります。月経は平均すると28日~35日周期で起こりますので、1カ月の中で便の出にくい時期、出やすい時期という周期があることになります。
このように、女性は1カ月の間に少なくとも10日間は便が出にくくなる時期が、10歳頃から閉経まで40年近く続きます。
腹痛が多い女性、残便感に悩む男性
便秘外来を担当してから感じるのは、重症の便秘では男性型、女性型と分けても良いような症状の違いがあるということです。
単に便が出ないことを便秘と考えている人が多いのですが、実はそうではありません。女性で重症の便秘の方は、便が出ないために腹痛や膨満感が強くなりやすいです。
しかし男性で最重症の便秘の方は、少しでも便は出ます。便が少しは出るけど全然すっきりしなくて、一日中不快な状態が続くのです。もちろん、男性で便が出ない女性型の便秘になる人、女性で不快感が主体の男性型の便秘になる人も中にはいます。