野党が積極的なのは「感染リスクがあるから」ではない
国会では野党が「大人数での飲食の自粛を国民に求めている最中の首相の行動は問題だ」と追及した。
菅首相は16日、問題の会食について「他の方との距離は十分にあった。だが、国民の誤解を招くという意味では真摯に反省している」と陳謝した。
確かに政府が「原則4人以下」と呼びかけている最中では、誤解を招く行動だろう。しかし十分な距離があれば感染のリスクは小さい。会場は高級ステーキ店というから、距離と換気に問題はないだろう。
野党がこの問題追及に積極的なのは、「感染リスクがあるから」ではなく、「菅首相を批判できるから」だろう。厳しい経営を強いられている飲食店の関係者は、こうした政治的パフォーマンスをどう思うだろうか。こうした批判を続けているから、野党への支持が伸びないのではないか。
ウイルスを駆逐できない以上、経済活動の在り方を議論するべき
12月16日付の朝日新聞の社説は「医療現場の一部は既に崩壊の危機に瀕している。遅きに失した判断と言わざるを得ない。中止を求める専門家らの声を無視し、事業を続けてきた菅政権の責任は、極めて重い」と書き出す。
「遅きに失した」「無視」「極めて重い」とかなり手厳しい。安倍晋三政権を引き継ぐ菅政権を嫌う朝日社説らしいが、冷静さに欠ける。感情に流されている。かつて朝日社説が誇った理性や知性はどこに消えてしまったのだろうか。
朝日社説は指摘する。
「菅政権はこれまで、感染拡大防止よりも経済活動の維持に軸足を置いてきた。しかし第3波とされる流行が一向に収まらない今は、政策の優先順位を見直すべきだ。長い目で見れば、それが本格的な経済回復にとっても近道なのではないか」
朝日社説は、「本格的な経済回復」に結び付くのは、経済活動の維持よりも感染拡大防止だと強調する。しかし、新型コロナウイルスは駆逐や根絶ができる病原体ではない。
2002年~03年に東南アジアを中心に流行したSARSウイルスとは違う。大半の専門家がそう考えている。駆逐できない以上、経済活動を再開する時期など、今後の社会の在り方についての議論が欠かせない。朝日社説にはそうした視点がない。