保冷箱に入ったワクチンの使用期限は10日間とされる。ただ、ドライアイスを追加すれば最大30日まで使用期限を延ばせるほか、ファイザー社によれば「解凍後は、冷蔵条件(2~8℃)で最大5日間保存できる」とのことだ。しかし、受け取る側となる英国の保健当局は「一度箱を開けてしまうと、温度管理が難しい」と考えており、当面は「ワクチン接種ハブ」での接種を優先するという。

いくつから受けられる?接種の順番は

では、これらのワクチンが入荷した後、どんな順番で接種が進んでいくのだろうか。

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ワクチン接種の優先順位
1番目:ケアホームの入居者(40万人)と職員(150万人)
2番目:80歳以上の国民(330万人)、医療・ソーシャルケア従事者(70万人)
3番目:75歳以上の国民(220万人)
4番目:70歳以上の国民(330万人)、重篤な基礎疾患がある者
5番目:65歳以上の国民(340万人)
6番目:16~64歳で、コロナにかかると既往症の悪化もしくは死亡に至るリスクのある者
7番目:60歳以上の国民(370万人)
8番目:55歳以上の国民(430万人)
9番目:50歳以上の国民(470万人)

「ワクチン接種の第1段階(Phase I)」における接種を受ける順番は、予防接種・免疫合同委員会(JCVI)が推奨し、政府が決定することになっている。ただ、現状のケアホームへの配送システムでは、低温を維持したまま、必要な本数ずつに分けて配布するのは困難と判断。当面は「ワクチン接種ハブ」に行ける高齢者や医療従事者等への接種を進めている。

また、接種2週目となった14日には、一部のかかりつけ医のいる小規模なクリニックでの接種も始まった。

若年層への接種は未定

では、ケアホームにいる入所者への接種はどうなるのだろうか。

今の見通しでは、ファイザー製ワクチンの適切な分配方法について検討を進める一方、本格的な接種実施には、輸送時の温度管理が厳しくない、オックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカが開発を進めるワクチンの承認が待たれるところだ。

英国へのワクチン第2便以降の到着スケジュールは明確になっていない。マット・ハンコック保健・社会福祉相は「12月中にさらに数百万本が届く」としているが、接種を行う医療機関等への配布は年明けになる見込みだ。英スカイニュースは、「50歳以上の接種(つまり、第1段階全体)は来年4月をメドに完了するとの見通し」と伝えている。

つまり、この施策で進むとなると、当面50歳未満の健常者には接種の機会が与えられない。英保健省は、年長者から接種を進め、優先順位9番目となる50歳以上の国民への接種まで済ませられれば「コロナによる死亡者を99%防げる」との見方を示しているからだ。若年層向けには「ウイルスの安全性をさらに確かめてから実施する」との考えを示しているにとどまり、現状では全国民へのワクチン接種完了への道筋は立っていない。