社会問題の解決も担う自動運転の未来

SIP自動走行システムプロジェクトの当初の目標は、乗用車の自動運転の実用化だった。しかし、2016年ごろからMaaS(編集部註:Mobility as a Service、情報通信技術を用いてさまざまな交通手段をシームレスに結びつけ、移動を「サービス」として提供/利用する概念)という考え方が話題となると、乗用車以外のモビリティ(移動/移動手段)の自動化への期待も高まってきた。

例えば、地方のお年寄りや子供など、交通弱者といわれる人々の移動手段や、モノを運ぶトラックなどの自動化も期待できることから、安全性の向上や人材不足への対応といった、社会課題の解決を担う役割が望まれるようになった。また、コロナ禍で注目されたのは、食材などを運ぶデリバリーロボットだ。電動車椅子より小さいくらいのロボットが、無人でモノを運ぶ姿はいかにも未来的だ。

センサーとコンピューターを駆使し、AIが運転するさまざまなモビリティは、これからの社会に不可欠な技術となるであろう。

自動運転のレベルの定義

ここでは当局の正式な許認可を取得した乗用車の自動運転について、詳しく説明する。自動運転を語るとき、レベル0~5の6段階の定義が使われるが、これはアメリカの自動車技術会「SAEインターナショナル」が定義したもので、自動車の機能や製品の優劣を表すものではない。簡単に説明すると、

・レベル0は加速・減速・操舵そうだの自動化がないもの。
・レベル1は加速と減速を自動化(自動ブレーキやクルーズ・コントロール)。
・レベル2は自動化したハンドル操作を加えたもので、ドライバーには前方監視義務がある
・レベル3は部分的な自動運転で、スピードや天候、各種センサーなどの状況がシステムの運行設計領域(ODD)を外れたときはドライバーが運転する。
・レベル4は条件外となっても、システムだけで安全を確保する。
・レベル5は無条件の完全自動運転。

ここで大切なのは、レベル2まではドライバーが前方を見守る義務がある「運転支援システム」(運転の責任は通常の運転同様にドライバーが担う)であり、真の意味で自動運転(運転の責任をシステムが負う)と呼べるのはレベル3以上のシステムであるという点だ。

とはいえレベル3では、走行条件によってシステムと人との間で運転責任が行き来するので、この段階では「部分的な自動運転」と理解すべきかもしれない。