日本の法改正は2019年に実現

これら2つの法律は、2019年度に相次いで改正された。国土交通省自動車局所管の道路運送車両法の改正では、保安基準の対象装置に自動運行装置が追加され、システムの整備やプログラムのアップデート等についての規定も整えられた。

また警察庁が所管する道路交通法の改正では、システムが操作する自動運転も「運転」という概念に含めることとし、レベル3の自動運転車を対象に、運行設計領域内でシステムが運転している間の、ドライバーの前方監視義務が免除された。同時に、自動運転中のドライバーの安全運転義務を明確化し、事故が起きた際の被害者救護義務もあることを明記している。

さらに両方の法律で、運転中のシステムの作動状態を記録するデータの保存も義務付けられた。

一方で、自動運転車による事故が起きたときの責任がどうなるのかは気になるところだ。現行法でも被害者救済を目的とする保険は支払われるが、自動車損害賠償保障法、製造物責任法、民法、自動車運転死傷行為等処罰法、刑法などの法律をどのように適用、あるいは改正すべきなのか。少なくとも刑法に関しては、さらなる議論が必要かもしれない。

国際的な議論にも積極的に参加

国土交通省は国連が主導する多国間の会議、自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で、熱心に議論に参加してきた。自動運転という新しい基準の策定において、日本政府は共同議長のポストを得ながらも議論をリードしてきたが、その背景には自動車工業会や自動車技術会の協力体制があったことは見逃せない。

WP29で議論されてきた国際基準の施行は、2021年1月の予定だ。国際的には、自動運転の実用化には1949年に制定されたジュネーブ道路交通条約を改正する必要があり、その改正案が採択されたのは2015年だった。一方の日本では、2018年に法制度の整備大綱が策定され、2019年に改正車両運送法と改正道交法が可決・公布、2020年4月1日から正式に施行された。日本の自動運転関連の法改正は遅いどころか、むしろ世界をリードしていることになる。