女性候補者の足を引っ張る「票ハラ」問題

【申】ただ、議員になってからはやりがいを持って活動できている方も、立候補から当選するまでの過程ではさまざまなハードルがあったようで……。例えば、立候補を表明すると「選挙の勝ち方を教えてやる」というおじさんたちが寄ってきて、それが苦痛だったという話もよく聞きます。

お茶の水女子大学の申琪榮教授

【川久保】ありがちな話ですよね(笑)。私は立候補を決めた時から、自分の選挙運動の手綱を他人に握らせてはいけないと強く思っていました。なので、(A)仕事と育児を犠牲にしない(B)他人のお金に頼らない(C)既存のやり方にとらわれない、という3つの方針を活動当初に宣言し、周囲の方から「そのやり方では当選できないのでは」と言われても、一貫して方針を曲げませんでした。

私は、従来型の選挙運動とは違う「一般の人にもできるやり方」をしたかったので、そこだけは曲げないぞと。ここを曲げるぐらいなら落選してもいいと思っていました。

【申】とはいえ、子育て支援制度を改善するという志を持って立候補されたのですから、それを果たすためには是が非でも当選する必要がありますよね。「票を持っている有力者に紹介するよ」と言われたら、やっぱり悩みませんか?

選挙活動(ゴミ拾い)中の川久保さん(写真提供=本人)

【川久保】支援者の中には、地域の有力者に私を紹介してくださる方もいらっしゃいました。その中には素晴らしい出会いもあり、ありがたい支援ではあったのですが、私のスタンスからするとちょっと違う気がして。それよりも、実際に地域で子育て支援を頑張っている方に、自分からアポをとって話を聞きに行くほうが私のスタンスに合っていると思ったので、そうお伝えして途中から紹介をお断りしていました。

【申】当初の意思を貫いたのですね。最近は立候補者に対する「票ハラ(票の力を盾にとったハラスメント)」が問題になっています。これは特に女性候補者に対して顕著で、政策の話だと思って会ったら性的な話をされたり、アドバイスを聞かないと生意気だと攻撃されたりすることも。

最初は応援したいという気持ちからでも、途中で境界線を越えてしまう有権者もいるようなんです。私は、これは女性の政治参画の壁にもなっていると思っています。