サプライチェーンは災害のショックを軽減もする

経済が災害などのショックに見舞われた場合、その影響はサプライチェーンを通じて波及します。しかし、だからといってサプライチェーンをグローバルに拡大するのはやめたほうがよいというのは短絡的です。サプライチェーンには官民の支援を被災企業に届ける経路になるというプラス面もあるのです。

戸堂康之『なぜ「よそ者」とつながることが最強なのか』(プレジデント社)

たとえば、2011年の東日本大震災のときにも、被災直後には自動車メーカーは「年内に正常化ができればよい」という見通しでしたが、実際には7月にはかなりの程度生産が復旧していました。この原因の一つは、顧客企業が被災したサプライヤーを支援したことです。

サプライチェーンが被災後の支援を媒介する働きについて、私はシドニー大学のマトウシュらとデータで検証しました。その結果、被災地外にサプライヤーや顧客企業がいる企業は、他社から復旧支援を受け、操業停止時間が短くなる傾向があることがわかりました。逆に、被災地内の企業とつながっている場合には、他の企業から支援を受けることがむしろ少なくなっていました。被災地内の企業は他社を支援する余力がなかったのです。

といっても、被災地内のつながりが復旧に何の効果もなかったわけではありません。もう少し長期的な影響を分析したところ、被災地内の企業と取引があったほうがむしろ震災後半年間の売上高が大きいことがわかったのです。

ポストコロナ時代のサプライチェーンのあり方

これらの分析は、グローバル化によって海外から経済ショックが流入しやすくなる問題に対する対処法をはっきりと示しています。キーワードは「多様なつながり」です。

さまざまなグループと多様につながることで、あるグループからショックが流入したとしても、別のグループで代替することでショックを緩和することができます。つまり、グローバル化によって高まるリスクに対しては、グローバル化の逆行ではなく、むしろさらにグローバル化してパートナーを多様化することで対処が可能なのです。

多様につながることで企業が災害に対して強靭になれることは、データで示されています。東日本大震災前に他社との代替生産の取り決めをしたり、部材を分散発注したりしていた被災地企業は、そうでない企業にくらべて震災後の売上高が40%前後が多かったこともわかっています。

多様化は、ポストコロナ時代のサプライチェーン、バリューチェーンのあり方のキーワードでもあるのです。

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