キャプテンの研究や本質行動学を学んでいます

もう1つは母校の慶應義塾大学の大学院で、キャプテンの研究や本質行動学を学んでいます。これまで小中高大、社会人、日本代表とキャプテンをやらせてもらいましたが、キャプテンやリーダーに求められる行動やメンタリティは共通するものがあると感じていました。その再現性や汎用性をアカデミックに分析できないかと思っています。

——将来ラグビーの指導者になるという選択肢はなかったのでしょうか。

HiRAKU代表取締役社長 廣瀬俊朗氏(共同通信フォト=写真)

【廣瀬】もちろんその選択肢も考えました。ただ、アスリートがコーチ以外の選択肢を持つことができたら、スポーツがもっと社会の中で大きな意味を持って広まるんじゃないかと思ったんです。先ほどもお話ししましたが、チームのリーダー、キャプテンにはコアな部分で欠かせないものがあるのは間違いないと思っています。

内側の部分から見ると、自分自身がどうありたいか、そこからチームがどういうふうになりたいか。その想いを行動に移していくのはどんな組織でも同じかなと。自分が思っている以上に結果を求めてしまったり、組織の外側に意識がとられて精神をすり減らしたり。もしくはリーダー、キャプテンってこうあるべきだという虚像を追いかけすぎて自分を見失ったり。そんなとき、自分とは何かを掘り下げられるようなアプローチができればと考えています。

——コロナ禍の20年5月からSNSを活用して大会が中止になってアピールの場を失った高校生アスリートの支援をはじめた。20年7月には活動を継続的に行うために「一般社団法人スポーツを止めるな」を設立しました。

【廣瀬】選手が「#ラグビーを止めるな2020」とタグ付けした動画を、大学のリクルーターなどが見られるように仕掛けました。五郎丸歩選手などのトップ選手が動画にコメントしたり、リツイートしたことでムーブメントは拡大し、実際にプレーをアピールする動画の投稿をきっかけに大学進学のチャンスをつかむケースもありました。

コロナ禍を通して、個人が自らをいかにマネジメントできるか、自己管理できるかが高校生からプロまで問われていると感じています。なんのためにラグビーをするのか? ラグビーができないときどんな方法で自分たちの存在意義を示すのか。個人としても学びは多かった。今後も、リーダーシップやSNSのリテラシー、自己表現などの教育にも力を注いでいきたいと考えています。

(文・構成=伊藤達也 写真=共同通信フォト)
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