さらに警備サービスのセコムも医療分野に意欲的だ。医療法人に対する株式会社の出資は認められていない(出資持分ありの医療法人には出資できるが、議決権はない)が、株式会社が土地・建物・医療機器のリースその他のサービスを提供し、経営に近い関与をすることは可能だ。

セコムはこの方式で医療業界に進出し、経営破綻した旧・倉本記念病院(千葉県船橋市)の土地・建物を買収し、「セコメディック病院」とするなど、全国で21の病院(診療所を含む)と提携し、サービスを提供している。「セコメディック病院」に関しては、実質的な乗っ取り(経営権掌握)で、医療法に抵触しないのかと2007年6月の参議院財政金融委員会で議論されたことがある。

筆者は新刊『カラ売り屋、日本上陸』(KADOKAWA)で、カラ売り専業ファンドと病院買収グループの攻防を描いた。合法的な医療グループによる病院の乗っ取りは、ヤクザ以上に巧妙、かつダイナミックである。

あらゆる手を使いヤクザは乗っ取りにくる

新型コロナ禍対策で政府の財政運営はますます厳しくなっており、病院“冬の時代”は今後も長く続きそうだ。ヤクザも手を替え品を替えしており、最近は、医療機関や金融サービス会社の背後にも反社会的勢力が潜んでいる模様だ。

黒木亮『カラ売り屋、日本上陸』(KADOKAWA)

先日も取材で、北海道のある病院が、反社会的勢力をバックに持つ別の病院グループに買収されそうになり、警察に相談したと聞いた。また資金繰りに窮しているのに乗じて、診療報酬請求権を年率60~120%の法外な手数料で買い取る、ヤクザまがいの悪徳ファクタリング業者も現れている。

前述のとおり、ヤクザの病院乗っ取りは、常識があれば気づくことができる「オレオレ詐欺」レベルのものだ。したがって、医師会や警察が日頃から注意喚起するのが、一番の対策かもしれない。

新田グループに乗っ取られ、手形や小切手が山口組系のフロント企業に流れた弁天橋病院の元理事長は「恥は気にせず弁護士に相談を」と話している。

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