フリーランスに数十万円を支払ったドイツの経済力と医療体制

当然のことながら、非常時の対応力というのは政府の財政とも密接に関係しています。

日本は先進諸外国の中で労働生産性が最下位という状況が続いていますが、マクロ経済的に生産性と賃金には密接な関係があり、生産性が低い国は所得も伸びません。逆に生産性が高い国は、賃金も高く、消費が活発になりますから政府の税収も増えます。

こうした政府の財力の違いは、非常時に顕著に示されることになります。

ドイツは今回のコロナ危機で、国内のフリーランスの就業者(ドイツに住む外国人を含む)に、数十万円を即座に支払い諸外国を驚かせましたが、税収が堅調であれば医療体制にも余裕が出てきます。

加谷珪一『日本は小国になるが、それは絶望ではない』(KADOKAWA)

ドイツは、欧州の中ではコロナウイルスによる致死率が低く推移していますが、これには充実した医療体制が大きく貢献しています。

ドイツの人口あたりのICU(集中治療室)の数は日本の4倍近く、人口あたりの医師数も日本の2倍近くあり、コロナウイルスの検査を1日当たり5万件以上も実施しました。政府に財力があれば、平時からさまざまなリスクを想定した対策が実施できますし、官庁の組織にも余裕が生まれますから、非常時にも十分な体制を組むことができます。日本のように体制が貧弱という理由から、検査を拡充できないといった事態にはなりにくいのです。

非常事態に備えるため、国内生産体制を拡充せよというのは、正論ではあるのですが、諸外国に比べて低く推移している生産性を向上できない限り、実現は困難です。非常事態への対処能力というのは、普段の経済力の延長線上にあるものなのです。

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