友人からの「生きていてくれてありがとう」

一方で、女性が訴え、判決が出たケースもある。愛知県豊田市議(当時)の50代の男性は、自身のフェイスブックに、女性の写真を転載し、「早く逮捕されるよう拡散お願いします」などと投稿。2020年8月17日、東京地裁は、男性の投稿が「原告(女性)の社会的評価を低下させる」として、男性に33万円の支払いを命じる判決を言い渡した。ネット中傷に振り回された「激動の日」から、ちょうど1年を迎える日だった。

毎日新聞取材班『SNS暴力 なぜ人は匿名の刃を振るうのか』(毎日新聞出版)

木村花さんが亡くなったことが報じられた後、女性はある友人に「同じようなことをされたんだよね。生きていてくれてありがとう」と言われた。改めて、自身の被害の大きさを実感した。その一方で、ネット上には、引き続き匿名による悪意が渦巻く。事件や裁判に関連する報道が出る度、SNS上には〈謝っているんだから許してやれよ〉〈しつこい女〉〈金の亡者〉などの心ない中傷が相次ぐ。

ネット中傷問題では、被害者本人だけでなく、代理人になる弁護士に火の粉が降りかかることも少なくない。小沢弁護士も一連の事件対応に関連し、SNS上で身の危険を感じるような中傷を受けたり、画像を面白おかしく加工されたりしたという。

「被害を受けるリスクを考え、ネットトラブルの訴訟を引き受けたがらない弁護士もいると思います」

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