「ウェットティッシュで夫の大便を拭いて片付ける」
彼女たちが非婚を選んだ背景には、多くの韓国の既婚女性がおかれている境遇がある。
「韓国では結婚をしたら、女性が家庭で生じる労働の全てを担います。少し前に、とある女性の動画配信者が自身の結婚生活について『ウェットティッシュで夫の大便と、床の汚れを拭いて片付ける』と告白しました。配偶者に献身的に尽くすことができる人であれば、結婚を考慮してみても良いと考えます。全般的な家事労働はもちろん、家事を1人で負担し配偶者の意見を無条件に受け入れ、配偶者の家族の面倒までを見て、配偶者の目標のために自身の夢を放棄できる人。そんな人であれば誰でも結婚をしたいのではないでしょうか?」
このような回答からは、非婚運動は韓国の結婚観が長年女性に強いてきた負担へのバックラッシュであるという見方もできる。
その点についてemifは、非婚は単なる男性主義への反発ではなく、より良い生き方の選択肢の一つであると主張する。婚姻制度そのものが人生を非効率なものにしており、「限定的な人間のエネルギーを効率的に使える方法は、やはり非婚」であるという視点に立脚しているのだという。
「非婚=パートナーも子供もいない」とは限らない
「emifを運営していると、本当に多くの不思議な経験をします。女性どうし身を寄せ合い、以前は関心のなかった経済力を培うための協力もします。考えを共有する場でも不便さを感じることなく、忌憚のない対話をできます。このすべてがお互いに支え合い、成長する機会をもたらしてくれます。そればかりでなく、何の心配も不安もなく体と心を休ませることができるし、冗談ひとつとっても、女性にとって受け入れられる言葉で楽しむことができます。この心地よさをすでに知ってしまったがゆえに、あえて結婚という選択をしなくなるのです」
ここで、混同されがちなのが非婚がイデオロギーであるのか、単に状態を示すのかといった点だ。
つまり、パートナーとなりうる男性と出会った場合は活動状態に影響を及ぼすのかということだ。また、「非婚主義団体はレズビアンの集団なのですか」という質問も多いという。
そうした「誤解」に対してはこのように説明する。
「非婚とは、パートナーや子の有無に関わらず、婚姻制度という枠組みの中で相手に隷属・依存したり、人生を他者に委ねるのではなく、いち個人として堂々と人生を歩むといったライフスタイルの一つとして理解していただければと思います」