「リスク」は3つに切り分けて考える

最後の「リスク」ですが、一旦、最悪のシナリオを描き、起きる確率と、起きた場合の影響、起きてしまった場合に考えられうる対応策を検討しておくことが大切です。そのうえで、Go/No Goを判断します。そのリスク自体がビジネスを継続できないほどの大きなものかどうか、今回のコロナ禍のような状況下では難しい判断もあったことでしょう。

例としては、緊急事態宣言が発令された頃にビデオ会議システム「Zoom」のセキュリティ問題がニュースになりました。そこでZoomは一切使用禁止となった企業と、利便性を優先して、適切な対策をしながら導入した会社と大きく二分されていました。未だに「Zoomは危ないから使用してはダメ」という企業も多いですが、その判断は論理的かつ合理的でしょうか。

たとえば、社内会議など影響の少ないところから使ってみるとか、プライベートで実験してみるとか、やり方はいくらでもあるはずです。他の選択肢と比較をすることもせず、「Zoomは絶対ダメ!」と言っているその判断の基準を見直す必要があります。

冷静な対応で、予定通りに新人研修を実施した企業

このように、新しいものは常にリスクと隣り合わせです。そして、リスクを取らねばビジネスは進みません。まずは、リスクを可視化し、きちんと評価することが大切です。

片桐あい『これからのテレワーク 新しい時代の働き方の教科書』(自由国民社)

リスクを切り分けて対処できた事例には、このようなものがあります。

4月の新人研修は軒並み延期や中止となりました。そんななか、予定通りの日程で実施した企業がありました。全国から集まる予定だった受講者を、それぞれの勤務地のオフィスからZoomでつないだのです。東京近郊は人数が多いため、社員を4、5名の小グループに分け、ソーシャルディスタンスを確保できるように座席を配置しました。

講師はきちんとメッセージを伝えられ、受講者の様子も観察でき、グループ発表もうまくできました。担当者の「実施するんだ」という熱意だけでなく、リスクを切り分けて判断できた好例です。

まだまだ始まったばかりのテレワーク。これから先の働き方は、まだらテレワークだろうが、ワーケーションだろうが、移住ワークだろうが、どんな働き方であっても、それは手段です。仕事の目的を効率的に気持ちよく果たすために、働き手が最適な働き方を選べる企業によい人材が集まり、組織が発展するのではないでしょうか。

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