「出会い喫茶はパラダイス」
「ここは、女子はなんでも無料。ここに座っていれば男が連れ出してくれて、ご飯とお金をもらえる。何もしないで稼げるとかマジ、パラダイスっしょ」
出会い喫茶では、連れ出した女性には謝礼として5000円程度の“お小遣い”を渡す決まりがある。一日3万円以上を稼ぐ女性もいるが、愛華さんの稼ぎは多くて一日5000円程度。月に5万~6万円しか稼げていないのだが「欲しいものもないし、スマホ代は親名義のままだから、焦って稼ぐ必要もない」と、彼女に危機感はない。
「シャワーは漫画喫茶に行けばいいし、ここにずっといて汗をかかない日は、ウェットティッシュで拭くだけ。でも実家にいるより、ここのほうが落ち着くし。お金じゃないんだよね~」
コロコロとよく笑う愛華さんは所謂“ギャル”と呼ばれる風貌だが、時折、伏し目がちに話す様子から、暗い生い立ちがのぞく。
父のDVから逃れ、歌舞伎町へ
しつけに厳しかったという愛華さんの両親。親の期待に応えようと、勉強や習い事に耐えてきた。しかし、父親の事業が傾き借金を抱えるようになると、父親によるしつけはより厳しさが増したという。言葉遣いや所作が悪ければ、大きな手で太ももを平手打ち。さらに帰宅時間を細かくチェックされ、門限の午後6時には玄関で待ち構えている始末。少しでもそれを過ぎれば、靴を脱ぐ前に三和土の上で殴りかかられた。
「オヤジの腹パンがマジでヤバくて。それが嫌で、家出しまくっていた。高校時代、補導されて家に戻ってからは知り合いのスーパーで働かされて、自分の好きにできる時間がなかった。だから今のほうが断然マシ」
そう言って髪をかき上げる際、愛華さんの手首にいくつもの自傷行為の痕が見えた。季節外れの猛暑日が続くなかでも頑に長袖を着続けるのは、人に語れぬ理由があるのだ。
「兄貴は引きこもりで、妹はうつ。ママはアル中だから助けてくれなくて、家の中はメチャクチャだよ。近所でいちばんデカい家なのに、中身は狂っているやつらばかり。普通にヤバイでしょ?」
愛華さんのバイト代はすべて家計に使われると信じていたが、大半が父親の女遊びに消えていることを知り、激しい口論となった。
「アイツ、バイト代巻き上げておいて風俗に行ってたんだ。最低すぎる。働くとかアホらしくなった」