より健全な状態を思い描く

組織の機能不全がいくつかの形態をとりうるように、健全さの表れ方も1つではない。ニールソン、パステルナック、メンデスによれば、「レジリエント」型──ビジネス戦略に沿っていながら、その一方で市場の変化を予測し、変化を先取りしながらそれに迅速に適応する──は、通常は企業にとって理想的な状態だ。しかし、企業が現在直面している課題のために、あるいはその業界の性質から、別の理想的な組織タイプが必要になることもある。ブーズ・アレンのコンサルタントたちはその例として、ニュージャージー州テターボロの医療検査会社、クエスト・ダイアグノスティックスのケースを挙げる。クエスト・ダイアグノスティックスが1990年代後半に赤字を出し始め、虚偽広告などの不正行為で罰金を科せられたとき、同社のCEOは抜本的な改革しか会社を救う道はないと判断した。新しい理想の状態を築くために、彼は一連の改革を行って同社を軍隊型の組織──意思決定の権限が少数の幹部チームに集中していることが特徴──につくり替えた。ニールソンが指摘しているように、「小売業など、外部で多くの決定をさせるのが無理な産業は、軍隊タイプの組織にすればうまくいくことが多い」。

理想の状態へ組織をどう導くか

理想を決めたら、次はどうやってそれを実現するかだ。リーダーは次のような手法をうまく使うべきだと、ブーズ・アレンのコンサルタントたちは言う。

●意思決定権…誰が何を決定するか。
●情報の流れ…パフォーマンスを測定するために使われる基準。知識を伝えるため、活動を調整するため、また期待を知らせるために使われる手段。
●モチベーションを掻き立てる手段…インセンティブ、報酬、機会。
●組織構造…マネジメント層。顧客、製品、もしくは地域を軸に構成された部門。指揮命令系統。

企業の規模やマネジャーのレベルがどうあれ、また、マネジャーがまずどの手法から始めるかにかかわらず、これらのどの線に沿った変革も、大きな全体的影響を及ぼすことができる。アメリカのある大手消費者サービス会社のリーダーたちが、芳しくない財務パフォーマンスを持続的な高パフォーマンスに変貌させるための5カ年計画で、複数のインセンティブと機会をうまく組み合わせた例を、ニールソンは紹介する。「この活動の焦点は社員の意識を変えることにあった。自分を特定の部門の一員とみなすところから、会社全体にとって何が最善かを第一に考えるレベルまでもっていくことにあった」とニールソンは言う。そのために、この会社のリーダーたちは、全社員が会社のパフォーマンスに応じてボーナスを受け取るプロフィット・シェアリング・プログラムを構築した。また、営業部門と業務部門のマネジャーを対象に、成長とコスト効率の両方を追求させる報奨金も導入した。