●各論4

乳幼児期は知育が大事なのは本当?

NO
知育は効果が長続きしない

乳幼児期の教育が、子どもの将来に良い効果を与えることは証明されているのか。山口さんは、大切なのは“情緒面の教育”だと言う。

「乳幼児期に愛着形成をしっかりすることで、将来、物事に粘り強く取り組む力やあきらめない力など、社会的に成功するために大切な力の土台をつくるといわれています。人生に大きく関わる情緒面をしっかり育ててやりましょう」

愛着形成は親子のスキンシップやコミュニケーションで促進されると考えられていて、テストで測れないような非認知能力につながるといわれている。

「英語や音楽、算数などを小さいうちからやらせる知的な面の教育は、途中でやめると効果がなくなるといわれています。しかし情緒面の教育は0〜2歳でしっかり行えば、その後生涯にわたり効果があります」

乳児期は、赤ちゃんを抱き抱えたり、声をかけて反応を見たり、泣き声や喃語なんごにこたえて声をかけたりあやしたりしてやること。この時期にネグレクト(育児放棄)にあった子どもは愛着形成がうまくいかないことがあるという。

東京大学経済学部の山口慎太郎教授

少し会話がわかるようになってきたら、日常生活でのルーティンや簡単なルールづくりが情緒面を育てるのに有効だ。例えば「寝る前に歯を磨く」「遊んだら片づけをする」という簡単なものでよいが、親が一貫性を持って継続して取り組むことが大事だ。「今日だけは例外ね」というのは、子どもを混乱させてしまうそうだ。

「日々のルールをこなすことで、感情コントロールや人への信頼感、自己肯定感なども身につくといわれています」

とはいえ、子育ては親も一緒に成長していく長い道のり。迷い、模索する作業の連続になるかもしれない。

「子育ては完璧を目指す必要はありません。究極的に言えば親はなくとも子は育つくらいにゆったりと考えてもいいのでは? 親の心理状態が子どもに影響を与えるので、完璧を目指すより安定した状態を保つほうが大事です」

山口さんは家庭では子どもとよく話をしたりして楽しい時間を過ごすことを心掛けているそうだ。

「子が成長すると話題の幅も広がりますし、子育てはどんどん面白くなりますよ」とエールを送ってくれた。

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