「成績の伸び悩み」は曖昧で漠然としている
そこで大前提として、「何を理由として、わが子が伸び悩んでいると思うのか?」ということを、保護者にはクリアにしてほしいのです。
例えば、その理由が「ずっと真面目に勉強しているけれど、成績がそれほど上がらない」ということであれば、子どもの1年前の成績表と、現在の成績表を並べて比較してみてください。その結果、1年前の成績よりも上がっていたら、その子はきちんと学力が伸びているということになります。
次に、「わが子の周囲の子どもたちも全然勉強していないのに、その集団のなかでも、ずっと最下位のほうにいる」という理由ならば、その子は親が心配するように学力が伸びていない可能性が高いかもしれません。
保護者が感じる「成績の伸び悩み」というのは、とてもあいまいで漠然とした部分があります。それゆえ、例に挙げたように「何を理由に、そう感じるのか?」ということを、まずクリアにする必要があるのです。
しかし私は、子どもの成績にとらわれて悩むよりは、「子どもが昨日した努力をきちんと評価する」ことを、保護者の方には大切にしてほしいと思うのです。
努力したけど報われなかったときはどうするか
例えば、家庭学習ではしっかり努力して頑張ったにもかかわらず、翌日テストを受けたら、ちょっと点数が悪かったとします。これは、子どもがきちんと努力をしたけれど、報われなかったケースです。このようなときは「頑張ったのに残念だけど、テスト直しをして、次回頑張ったらいいじゃない」と、子どもに声かけをして、テストでは報われなかった昨日の努力を労ってほしいのです。そして、子どもに間違えた問題の解き直しをさせます。全部が無理ならば、半分でも3割でもかまいません。
このような、小さいけれど丁寧な積み上げをしていくことで、勉強のプラスの循環が始まるのです。
一方で、親がほかの子と比較して「あなた、○○くんよりも算数ができてないじゃないの」と言ったとします。それを聞いた子どもは、一生懸命努力して頑張るのですが、「今度は△△くんに負けた。あなたはやっぱり勉強が足りない」とか「集中してないからでしょう」とか、親がマイナスなことばかりを口にしていると、頑張りを評価されることがないため、子どものなかで努力の価値が積み重なっていきません。すると起こるのが、負のループです。
もしも「わが子の成績が伸び悩んでいる」とか「なかなか報われない」ということを親が感じる瞬間があったとしても、それをきっかけに子どもが「いい努力」をしてくれて、それがうまくつながっていったら、何も心配することはないのです。親がすべきことは悩みにとらわれることではなく、マイナスな要素があったときに「それをどう使うか」なのです。