マスクを着けることが当然のマナーと考える人もいる

6月9日付の読売新聞の社説は「マスクと熱中症 屋外では適切に着脱したい」との見出しを掲げてこうアドバイスする。

「屋外や人の少ないところなどでは、熱がこもるマスクを外し、熱中症予防を優先させることが大切だ。特に体温の調節機能が弱い高齢者や子供は、熱中症のリスクが高いことを認識してほしい」
「厚生労働省は熱中症対策として、屋外で2メートル以上の距離が保てる場合には、マスクを外すよう呼びかけている。日本救急医学会なども、適宜、マスクを外して休憩をとることなどを提言した」

読売社説が指摘するように、夏場のマスクはどうしても熱がこもる。マスクの着用は、熱中症とのリスクと背中合わせの状態にあると理解すべきだ。

「屋外で2メートル以上の距離」と指摘しているが、現実的には距離をいちいち測るわけにはいかない。そもそも風の吹く野外では感染は成立しにくい。不特定多数の人が密集する場所でなければ、野外ではマスクを外したほうがいい。

終わりで読売社説は「常にマスクを着けることが当然のマナーと考える人もいるに違いない。マスクをしていない人が非難を受けないよう、政府や自治体は、熱中症予防のためマスクを外した方がいい局面もあると、もっと周知してはどうか」と提案する。賛成である。高温多湿のシーズンでのマスクの着用には、柔軟さとバランス感覚が欠かせない。

日本救急医学会はマスクを適宜外して休憩することを促した

次に毎日新聞の社説(6月10日付)。毎日社説は「熱中症に注意が必要な季節となった。新型コロナウイルスの感染防止と両立できるように、きめ細かい対策が必要だ」と書き出し、「コロナと熱中症 高リスクへの対応柔軟に」と見出しをつけている。「きめ細かい」「柔軟な対応」というのが難しい。

「熱中症予防は本来、気温が上がっていく時期に外で汗をかいて少しずつ暑さに体をならすことが有効だ。だが、今年は外出自粛が続き、そうした準備のできていない人が多い。まずは散歩などの軽い運動に取り組むことが大事だ」

身体を少しずつ暑さに順応させていく。これが熱中症対策の基本である。それが今年は外出自粛のせいで難しく、熱中症の被害が多発する恐れがある。マスクの脱着について注意する必要がある。

毎日社説はマスク脱着についてはこう書いている。

「感染防止でマスクの着用が常態化している。その状態で運動していると、心拍数や呼吸数が上昇して体に負担がかかる」
「日本救急医学会などは熱中症予防の提言を発表した。その中で、マスクを適宜外して休憩することを促した。口の中の渇きを感じにくくなるため、こまめな水分の補給もいっそう重要になるという」

やはり一番の対策はマスクを外すことである。そして例年と同じように水分の補給を常に心掛けることだ。

毎日社説は学校現場での取り組み(教室での換気の徹底やマスクの常時着用など)を「リスクをそのつど慎重に見極め、柔軟に対応する」よう求めた後、高齢者の健康対策に警鐘を鳴らす。

「総務省消防庁によると、昨年5~9月に熱中症で救急搬送された人の過半数は65歳以上の高齢者だった。目立つのは独居のケースだ。外出自粛などで近所付き合いも希薄になっているだろう。暑い日には、家族や友人が電話やメールで注意喚起してほしい」

日本は世界で最も高齢化が進んでいる国である。私たちの周囲には多くのお年寄りがいる。コロナウイルス感染症と熱中症がダブルで襲来するこの夏は、高齢者の健康に配慮した行動を取りたい。これこそ、きめの細かい対策のひとつである。

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