ここは1つ、伝家の宝刀である解散権の行使を!
安倍総理は保守系議員の人心掌握術も長けており、中でも日本維新の会を巧みに利用する力を持った稀有な存在といえる。維新創業者の橋下徹元大阪府知事や松井一郎大阪市長と定期的に会談し、与党でも野党でもない「ゆ党」に位置付けることで、安倍政権の政策実現を後押しさせる存在に追いやってきた。その維新はコロナ対応で人気が上昇した吉村洋文大阪府知事の後に続けと意気込むが、今頃になって国民民主党の前原誠司元外相や岸本周平選対委員長ら野党議員と勉強会を立ち上げ、「野合」に走る気配を見せるなど変節ぶりも目立つ。自民党内からは「維新は偉そうに『野合はダメ』と言っていても、結局は『野合』に進む他党と同じ」(同党中堅議員)と揶揄される始末だ。
いまだ世界中で解答のない、出口の見えない新型コロナウイルスとの戦いは人々の怒りの矛先がトップリーダーに向かう。だが、安倍総理はそれらを一つひとつ謙虚に受け止め、新しい国のカタチを追求する準備をしているようにも映る。「解散は総理の専権事項だ」。菅義偉官房長官は6月3日の記者会見で「解散権」について触れたが、いま仮に衆議院解散・総選挙を実施すれば、優位にあるのは政党支持率トップの自民党だろう。自民党幹部はこうつぶやく。「維新が調子に乗って挑んでくるなら、本物の保守政党の力を見せて潰すだけだ」。新しい国のカタチが問われる中、その先頭に立つ安倍総理はいかなるビジョンを描いていくのか。コロナ危機で国民が目標を定めにくい中、ここは1つ、伝家の宝刀である解散権を行使し、「保守派のスター」としての総決算を新たなビジョンとともに遂行する大仕事、すなわち「日本を、取り戻す。」ことをやり遂げてもらいたいと願うのは私だけではないだろう。