「責める気持ち」や「イライラ」も否定しない
考え・気持ち・体の感じに気づき、受け流す
マインドフルネスとは、狭い意味では、仏教瞑想に由来する「あるがままの気づき」を重視する意識のありようを指す。現代流のマインドフルネスでは、坐禅や呼吸法、ヨガなどの要素も含まれ、体を重視したアプローチともいえるが、体のあり方よりも、意識のあり方、注意の向け方がこのワークの要となっている。
たとえば、いま考えていること(思考)、気持ち(感情)、体の感じ方(感覚)などに意識的に注意を向けてみる。頼まれた仕事なことをどこかで考えていたり(思考)、それによって焦った気持ち(感情)になっていたり、少しドキドキしたり、息が浅い感じ(感覚)に気づくかもしれない。「あるがまま」というのは、このような考えや気持ち、感じに対して「良くない」とか「ダメだ」といった判断をしないこと、つまり、「善し悪し」という尾ひれをつけない状態をいう。もし尾ひれに気づいたなら、それはそういう思考として気づければよい。
誰かを責めるような思考、イライラした感情、肩が強ばった感覚に気づいたとしても、すぐに打ち消そうとせず、それも自分の一部として見守る態度を心がける。小川に流れる木の葉をのんびり見つめるように、無理に押し流そうとしたり、せき止めたりもせず、意識の流れにあるさまざまな考えやイメージ、気持ち、感じを一つひとつ言葉にしていく。そうすることで、日々の煩わしさから離れて、頭もスッキリし、気持ちに振り回されることなく、心も整ってきやすい。
ごはんを味わい、お茶をゆっくり飲んでみる
五感を使ってゆっくり食べ、飲む
ネガティブな心持ちに気づくだけでなく、ごはんを普段よりもじっくりと味わいながら食べる、お茶やコーヒーをゆっくり飲むのもマインドフルなありようだ。たとえば、白飯でも光の当たり具合によって色が違うし、箸で持ち上げて重さを感じることもできる。口に近づければ、匂いもするし、唾液がこみ上げてくることに気づくかもしれない。口に入れてからも複雑な舌触りや歯触りがあり、ゆっくり噛むごとに味の変化があるかもしれない。食べるということの感覚の豊かさを再認識し、食に対する感謝の念をもつことは、落ち着いた日常を取り戻す一助となるだろう。