日本では政治リーダーからの国民へのメッセージが弱い
「45年の敗戦直後と同等の経済状況まで落ち込むことを覚悟したほうがいい。リーマンショックのときも、東日本大震災のときも、政府が大規模な公共事業を打ち出せば復興支援になり、景気が上向いたが、コロナショックが直撃している青果店や鮮魚店などにインフラ整備系の公共事業の効果があるとは思えない」
その一方で、19年末の2万3000円台から一時1万6000円台に落ちた日経平均株価は1万9000円台にまで戻った。これについて経済学者の竹中平蔵氏は「おそらく日経平均株価が少し回復したのは、日本の感染率や死亡率が世界水準と比べて低いことに対する安心感の表れです」と説明する。
「その安心にあぐらをかくことはできません。各国首脳がテレビを通じて直接国民にメッセージを発し続けているのに対し、日本では政治リーダーからの国民へのメッセージが弱く、あらゆる面で後手後手感が否めません」(竹中氏)
今、安心するのは早すぎる。警戒感は高い状態で維持するべきだろう。しかし、菅原氏によれば、株式だけで生きてきた投資家の中にも、この数字を見て「落ち着いた」と判断してしまった人がいた。
「私が長く親しくしている『プロ』と評価する人物ですら楽観視していることに心底驚いた。『株価』とは企業への『信用』が創造している。『財務』も『成長力』も企業に対する『信用創造』の要素にすぎない。コロナショックが信用創造の土台となる『実体経済』に巨大な穴をあけているのは米GDP予測で明らかだ。経済の『底』が抜けた状態で、どうして『信用』が『創造』されるのか」(菅原氏)
そんな中で政府は2020年度の当初予算を成立させ、無利子・無担保の融資など対策を発表した。だが、飯島氏は「すぐには効果は出てこない」と指摘する。
「新予算のもとで仕事を発注できるのは最速でも20年5月からで、効果が出るのは20年7月以降。この厳しい状況下で4~6月の3カ月を耐えられない人もたくさんいるだろう。そんな中で6月は企業の決算期も重なり、最悪の事態を想定してそれに備える必要がある。想像を絶する最悪の数値が企業決算から出ないよう、祈るばかりだ」(飯島氏)
ただ、竹中氏はこうも指摘する。
「いずれパンデミックは終わります。日経平均株価もいつかは2万4000円あたりに回復する日が来るでしょう。それが『いつか』ということは今はなんとも言えません。しかし、長期で株を保有する体力があれば、保有すべきだし、あえて今買い増すのも手かもしれません。『コロナ前』と『コロナ後』では、間違いなく世界の様相は激変しています。日本が本気で今後V字回復したいのであれば、目先の対応に追われるだけでなく、『コロナ後』の世界を視野にビジョンをしっかり描くべきです」(竹中氏)