天然痘撲滅の哲学を失ったWHO
人類はウイルスによって、度々存亡の危機に瀕する歴史を繰り返してきました。人類が歴史上、唯一根絶できたのは「天然痘」であり、この根絶にはWHOの活躍抜きには語ることはできません。
天然痘は古くは紀元前より存在するウイルスといわれており、イギリスの医学者エドワード・ジェンナー氏(1749~1823年)が牛痘由来の天然痘ワクチンを開発するまで、人類はこのウイルスの脅威に生殺与奪を握られてきました。WHOは1958年に「世界天然痘根絶計画」を可決して根絶宣言を開始させました。
当初は全人類に対して種痘を植える「皆種痘」が推奨されるも、医療整備が整っていない新興国においては、皆種痘の実現が困難とされました。しかし、1967年にWHOは方向転換、患者を発見することに全力を挙げ、患者および接触した人々に限定して天然痘種痘を行うという戦略的なウイルスの封じ込めを行う指針を打ち出しました。
当時は根絶困難とされたインドにおいても、この作戦は功を奏し、1980年WHOは世界に撲滅宣言をすることになったのです。有効な作戦立案だけにとどまらず、ウイルス撲滅に尽力したことでWHOの活躍は誰もが認めることとなりました。この功績は「人類をウイルスによる病魔から救う」という明確な哲学に裏打ちされたものだったのです。
昨今のWHOはこの天然痘撲滅時の哲学を失い、中国への忖度に終止する腐敗した機関のようにも見えてしまいます。かつての獅子奮迅の活躍を取り戻して、新型コロナウイルス終息に向けて取り組んでもらいたいものです。