ところが、コロナ災禍への対応はこの種の調整能力をほとんど必要としない。方針を決めることが最重要で、調整は二の次である。求められるのは、ガイドラインなしにリスクをとりながら急激に変化する場面に際して意思決定し対応していく能力である。調整ではない。調整を主とするととてつもなく時間がかかる。全体にとって極めて不利益な事態が発生する。

簡明な例が、ステークホルダー間の調整を繰り返し、緊急事態宣言が後手に回った政府だろう。調整の結果、玉虫色の混乱を引き起こすだけの決定がなされ、スーパーには人だかりができ、多くの飲食店や商店は存続に東奔西走している。

こんな上司がいたら転職を考えた方が良い

不幸にもあなたのそばに決められない上司がいたとしたら、この時期は大きなチャンスだと思った方がいい。現在は非常時である。非定常に世の中が推移する。決められない上司が得意の調整をすることで事態が好転するような局面ではない。そして、コロナが終わった後は、より予測が難しい、より不連続に推移する世の中になるだろう。

求められるのは調整ではなくリスクを背負った意思決定である。その時のために備えるべきだ。これからの日本社会は、長年調整能力だけで世渡りしてきた上司が太刀打ちできる環境にはならない。

高田朝子『女性マネージャーの働き方改革2.0』(生産性出版)

では、何をすべきか。決められない上司が直面している問題を自分なりに意思決定してみることである。実際に口に出し、敵を作って実行する必要は必ずしもない。エア意思決定を上司の立場でしてみる。シミュレーションしてみるのだ。

「前例がそうだから」とされていることを全て掘り起こしてみると良い。果たしてそれが現在適切なのか。自分だったらどう決定するか。シミュレーションを重ねると良い。意思決定の確からしさは訓練によって精度を増す。直裁に言えば、意思決定をした経験値こそがその質を高める。

そして何よりも大事なのは、自分軸を持つことである。全ての意思決定は、自分なりの判断基準があり、自分なりの未来予想図があってこそ成立する。もしも、コロナによるリモートワークや自宅待機などで通勤時間が省けたのならば、自分軸は何なのか時間をとってじっくり考えると良い。

最後に、もしも、この後に及んで決められない上司が社内の大半を占め、権勢を振るっているのならば、コロナが猛威を振るっているこの時期にこそ爪を研ぎ、その後の転職を考えた方が良いかもしれない。

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