日本では最低賃金の引き上げがパートタイマーの就業を抑制

最低賃金の引き上げによってパートタイム労働者の平均時給が上昇すると、日本に限っては、短時間労働に従事する女性配偶者を中心に就業時間の抑制が行われる可能性がある。

図表は、パートタイム労働者の年収、労働時間、時給の推移を示したものである。パートタイム労働者は時給が上昇すると労働時間が減少するという傾向が顕著に見られ、その結果、年収はわずかな増加にとどまっている。

多くの企業で配偶者(家族)手当の支給基準額となっている「103万円の壁」や、社会保険加入の基準額である「130万円の壁」を意識して、パートタイム労働者が就業時間を調整していると考えられる。総務省「平成29年就業構造基本調査」によると、収入を一定の金額に抑えるために就業時間、日数の調整を行っているパート及びアルバイトは496万人存在する。その多くは女性配偶者であり、年収50~149万円に分布している。

最低賃金で働く短時間労働者の多くは主婦や学生であり、貧困層ではない。川口・森(2009)(※12)によると最低賃金労働者のうち世帯主は30%程度にとどまり、約半数は年間世帯収入500万円以上の非世帯主であるという。また、内閣府「平成29年度 年次経済財政報告」では、最低賃金1%引き上げによるパートタイム労働者の賃金上昇率の中位値は0.4%程度と推計されている。こうしたことから、最低賃金の引き上げはパート・アルバイトの賃金上昇を通じて、結果的に短時間労働者の就業調整を促している可能性がある。

(※12)川口 大司・森 悠子(2009)「最低賃金労働者の属性と最低賃金引き上げの雇用への影響」日本労働研究雑誌, No. 593, pp. 41‐54