軽犯罪法違反での検挙人数

職業に就く意思があったなら、浮浪罪の要件の「職業に就く意思を有せず」を満たさないため、浮浪罪には該当しない。逮捕後に行われた尿検査は、結果的に浮浪容疑という違法な別件逮捕中に収集された証拠だとして、裁判所が無効と扱ったのだ。

ただ、この結果については、覚せい剤使用の証拠があるのは事実なのに、その被告人が無罪とされたのには、納得いかない人も多いのではないか。

「軽犯罪法は逮捕の口実として乱用されやすいため、同法4条では、不当に国民の権利を侵害してはならないと、あえて注意書きがなされている」(同)

軽犯罪法が別件逮捕に使われないよう、わざわざ法律に書かれているわけだ。無罪判決は、この条文の趣旨を汲んだ側面があったのかもしれない。

しかし一方で、「軽犯罪法は、警察関係者にとっては非常に重要な法律」(同)

というのも事実である。別件逮捕はけしからん、と言うのは簡単だが、現実には重大な罪を犯した者を捕まえるために、現行犯逮捕しやすい軽犯罪法が役立っている側面もある。治安維持を優先するのか、警察権力からの自由が大事なのか。軽犯罪法は、ちょうどその両者が交差する微妙な位置にある法律であるという意味で「重い」法律だともいえる。

(ライヴ・アート=図版作成)