意思決定に時間がかかるEUの脆弱性
1月末の英国の離脱で初のサイズダウンを経験したEUだが、それでも27カ国という多くの国々を抱えている。EUの意思決定は良くも悪くも時間がかかるが、危機という非常時においてこの意思決定のあり方はとても脆弱だ。ギリシャ危機など欧州債務危機の際に、こうしたEUが持つ脆弱性があらわになったはずだ。
コロナショックを受けて欧州各国の経済が冷え込んでいるが、感染者数の多さと市場の反応のひどさが示すように、イタリア経済は特に悪化している。イタリアのみならず各国が対策に追われているが、欧州統合の理念に基づくならば、今こそイタリアを救う「不退転の決意」をEUは早急に示すべきなのだろう。
ヒトとモノが動かない経済危機に直面し、それを不安視するカネも危機的状況に陥りつつある状況、それが今のコロナショックかもしれない。では最低限、カネの不安を和らげるためにはどうしたらよいのだろうか。それは政府や中銀が、何でもやるという不退転の決意を市場関係者に示すことに他ならない。
同様のことは米国にも言える。強気のドナルド・トランプ政権は3月17日になってようやく1兆ドル(約100兆円)の経済対策パッケージが発表したが、大統領がコロナ対策のためなら何でもやるという決意を示したわけではない。むしろコロナ発祥の地である中国を批判するなど、トランプ大統領は危機管理の本質とはほど遠い言動に終始している。
日本もまた煮え切らない。野党は政権の初動対応を批判するばかりだが、今大切なことは挙国一致でこの問題に立ち向かう姿勢を政治が示すことだ。立場を超えた協力関係に基づく「不退転の決意」を各国が示すとともに、また国際的な協調体制で臨むことをアピールできない限り、残念ながら市場の混乱は続くだろう。