世界経済が大きく動揺する最悪シナリオ
新型肺炎の影響を警戒し、世界の大手投資家は中国をはじめとする新興国から資金を引き上げつつある。低金利環境の中で資金が流入してきた米国のジャンク債市場からも資金が流出しはじめた。背景には、中国経済の減速などによって原油価格が下落し、米シェールガス産業の収益、財務内容が悪化するなどの懸念がある。中国発の新型肺炎が世界経済を混乱させるとの懸念は高まりはじめている。
この状況下、韓国では輸出の伸び悩みや内需低迷を受けてデフレリスクが高まりつつあるとみられる。デフレ懸念が一段と高まれば、韓国銀行(中央銀行)は金融緩和に動かなければならない。それは、ドルや円に対するウォン安要因となるだろう。企業業績などへの懸念から韓国株への売り圧力も増しやすくなっている。
それに加え、北朝鮮のリスクもある。3月2日、北朝鮮はミサイルを発射した。北朝鮮は軍事挑発を行い、米国の関心を引き、制裁緩和・解除などにつなげようとしているとみられる。軍事挑発が続くのであれば、世界の投資家、金融機関、企業は経済・地政学への懸念から韓国からの資金回収をより重視するだろう。
新型肺炎は世界経済の不安定性を高めている。状況によっては、中国と米国の景気減速が同時に進むなど世界経済と金融市場が大きく動揺する展開もあり得る。徐々に市場参加者のリスク回避姿勢は強まり、韓国からより急速に資金が流出することもあるだろう。日米との関係を悪化させてしまった文政権がそうしたリスクにどう対応できるか、先行き不透明感は増している。