クルーズ船で一気に人口密度が増えたバルセロナ

観光による地域活性の“優等生”であったバルセロナやフィレンツェですが、今では世界中からやってくる観光客が、京都以上に住民の生活を脅かすようになっています。

観光名所が集中するバルセロナの旧市街は、もともと高い人口密度を持つエリアでした。そこに格安航空会社や大型クルーズ船の浸透で、年間4000~5000万人という観光客が押し寄せ、交通やゴミ、地域の安全管理などの公共サービスは打撃を受けました。

やがて観光による経済振興以前に、自分たちの仕事環境、住環境、自然環境をいかに守るかが、住民にとっては最優先の課題となり、観光促進をリードした町の市民たちが「観光客は帰れ」というデモを実施。町には「観光が町を殺す」といった不穏なビラが貼られるようになりました。

都市再生の優等生とされたバルセロナが「観光公害」に悩まされるようになった結果、むしろ「ノーモアツーリズム」の先頭に立っているのは皮肉なことでもあります。

民泊バブルで、昔からの住民が住めなくなった

中でも、現代ならではの課題の筆頭が「民泊」です。有名な観光地では、民泊として運用することをあてこんでマンションが乱造され、相場よりもさらに高い価格で取り引きされます。民泊バブルが起こった結果、周辺の地価・家賃が上がり、もとからいた住民が住めなくなってしまっているのです。

民泊に泊まる客の中には一部、道端で飲食をする、隣の敷地内に入る、ゴミを始末しないといった近隣への迷惑行為を行う人が見られます。しかもそのような旅行者が短期間滞在してトラブルを起こしても、持ち主が不在で連絡の取りようがなく、問題は未解決のまま悪循環に陥りがちです。

また、世界中どこでも、観光客は大きなスーツケースを持って移動します。それによって電車やバスが混み合うことに加え、彼らがガラガラと引きずるスーツケースの車輪は、案内サインが書かれている駅構内の床やプラットフォーム、舗装路、そして車両を傷めます。

それらのメンテナンスは受け入れ側が担うしかなく、住民にとっては、税金などによるコストを負担させられるとともに普段の足も邪魔をされるという、何重もの理不尽状態を生み出しています。