強制的に部活をさせる学校や自治体がある

ただし、「どの子も部活動をやりたい」というわけではありません。長時間の部活動がつらい、部活動をやりたくないのに加入させられる、という生徒の問題は広がりつつあります。自主的であるべき部活動に、生徒が強制的に入部させられる学校や、それどころか「何かしら部活動に所属すること」と定めている自治体すらあります。

他方の教師にとっても、部活動は大変です。生徒が授業と違う場で輝く姿を見られるという良さがあるとはいえ、過労死ラインを超えて働かざるを得ない可能性があるほど、大変な業務なのです。

紙幅の関係上詳細は省きますが、部活動の顧問は「ボランティア」であり、教師の業務として位置付けられないものと考えられています(詳しくは、本書『先生も大変なんです』の第5章をお読みください)。そして、その活動はほとんど勤務時間外に行われます。そして、土日の一定時間を超えて働く場合にわずかな手当が支給される以外、何時間働いても残業代や土日出勤分が支払われることはありません。こうした、部活動の労働時間は、多い先生では毎週数十時間にも及びます。

「顧問ができて一人前」という風潮がある

こんな実態があるにもかかわらず、職員室の中には、その業務量の多さに対して文句を言ったり、未経験のスポーツの指導を任されたことに不平を述べたりすることは憚られる空気があります。

その理由として、一つには、「部活動顧問ができて一人前」という風潮の存在です。「生徒が好きで参加する部活動の指導ができなければ授業もうまくできない、そして生徒がやりたい部活動の顧問をするのは当然」というわけです。

そしてもう一つ、重要なのが、多くの学校には部活動に並々ならぬ思い・労力をかけている教師がいるためです。

往々にしてそういった部活動顧問の教師は、学生時代に力を入れていた競技の部活動顧問です。自分自身が学生時代にその競技・活動に魅了されて、その素晴らしさを教師になって生徒に伝えたい……そう思って教師になった人もたくさんいるのです。

部活動顧問として県大会・ブロック大会などで優勝経験があり、長年その競技の部活動を担当している「大御所」のような先生が職員室にいる学校は、決して珍しくありません。もちろんその「大御所」は部活動を誇りに思い、それに全力を尽くすことが大事だと考えています。