火葬後すぐに寺に持ち込んで「遺骨処理」する人の感覚
一心寺の納骨が増えている背景には一族の墓に入らない「永代供養」ブーム、そして、墓じまいや改葬の増加がある。骨仏の本来の「分骨供養」を誤解し、全骨が持ち込まれるケースが多くなってきた。なかには火葬後すぐに持参してくるケースもあるという。誤解を恐れずに言えば、「遺骨処理」のような感覚だ。
さらに、墓じまいした後の古い遺骨を持参するケースも後を絶たない状態だ。関西では骨壺から取り出し、土に還す埋葬法が主流である。こうした遺骨は土が混じり、骨仏の造形に支障をきたす。
いずれにしても一心寺では、ここ数年で過剰に遺骨が持ち込まれ、受け入れが限界になってきている。
今後の納骨数を予測すれば、減っていくことは考えにくい。すでに日本は多死社会に入っているからだ。現在、死者数は140万人ほどであるが、2030年には160万人を突破。2060年以降も年間150万~160万人レベルの死者数が続く。
「骨仏」人気の理由は、納骨料が1万円~と格安だから
しかし、なぜそれほどに、骨仏が人気なのか。
それは、身も蓋もない言い方をすれば「料金が安い」からである。納骨冥加料は小骨や分骨で1万円~2万円。胴骨を含む容量の多いケースや全骨で1万5000円~3万円である。
例えば、東京都心部の自動搬送式永代供養納骨堂では1柱あたり90万円前後であるから、一心寺の骨仏は破格といえる。よって、生活困窮者が一心寺に全骨を納骨したいというケースも少なくない。それを知る一心寺は、本来の骨仏の趣旨とは異なるものの、なるべく全骨を受け入れてきた経緯がある。
だが、そのことを逆手にとって、心ない考え方をする人も少なからずいるのも事実だ。
最近では、宅配便を使って遺骨を送り、永代供養してもらう「送骨」の手段で送りつけてくる遺族もいるという。一心寺では送骨は、送り返している。
一心寺は境内チラシなどで、「納骨件数の増加と胴骨の急増、さらに遠隔墓地の墓じまいなどによる大量・多数のご遺骨にどう対応すればよいか? 一心寺目下の重大問題であり、方針をあいまいにしたままでは済まされない急務」と表明。2021年より、直径9cm、高さ11cm以下の小骨壷のみ受け付ける。また、改葬(墓じまいによる納骨、遺骨の移動)納骨は一切受け付けないという。
故郷やご先祖様を思う「供養の心」があってこそ輝く骨仏である。一心寺の納骨堂の前で手を合わせる人々を見ると、多くは心のある人だと感じる。一方で、弔いを合理的にコスト重視で考える人もいる。先人が育んできた葬送文化や風習が、風前の灯である。