サブプライム・ローンの証券化商品を保有していた欧州の金融機関が、そのバランスシートを傷めているために、ドル資金を調達できない状態にあることに加えて、欧州の一部の国々で土地バブルがアメリカと同時に崩壊したことによって、ユーロをはじめとする欧州通貨が暴落した。

ユーロはユーロ圏およびEU域内における決済通貨として利用されているものの、域外諸国とは依然としてドルを決済通貨として利用せざるをえない状況において、欧州の金融機関が傷んだバランスシートのためにドル資金を調達できないことが、ユーロをドルに対して大きく減価させることになっている。逆に言うと、ユーロ圏およびEU域内を除くと、世界経済における決済通貨をドルが独占していることから、グローバル金融危機によってバランスシートを傷めた世界中の金融機関へのドル資金の供給が細り、これらの金融機関がドル資金を欲しても調達できないことから、ドルに対する超過需要状態が発生して、アメリカ発のグローバル金融危機のなかでドルが相対的に増価する事態となっている。


図2:減価しているアジア通貨(AMU乖離指標)

次に、目をアジアの各国通貨に移してみよう。確かにアジア通貨は全体的に見ると、最近、減価傾向にあるものの、アジア各国通貨間においても非対称的な動きを示している。図2は、アジア通貨のなかで(AMUに対して)減価している通貨(インドネシア・ルピア、韓国ウォン、マレーシア・リンギット、フィリピン・ペソ、シンガポール・ドル、タイ・バーツ)を集めて、その動きを示している。一方、図3は、アジア通貨のなかで(AMUに対して)増価している円と人民元の動きを示している。最も大きく減価したのは、韓国ウォンである。ウォンは、04年後半から増価し始め、06年2月から07年11月初めまで、00~01年のベンチマークに比較して20%過大評価されていた。しかし、07年11月以降、ウォンは急速に減価し続け、08年10月末には、00~01年のベンチマークに比較して30%弱の過小評価をされるまでに減価した。この1年ほどの間に、ウォンは、アジア通貨のなかで50ポイントも減価したことになる。

その他のアジア通貨も、ウォンほどではないが、タイ・バーツなども、サブプライム・ショックとリーマン・ブラザーズ・ショックを受けて、この1年間に減価している。