では、「快適さ」はどうなのか。
広さ2畳ほどの客室に入り、内側から鍵をかけた。1メートルほどの短いソファベッドの前に、テレビとDVDプレーヤーが置かれている。備品はボックスティッシュ2箱、紙おしぼり4つ、コンドーム1つ。目的志向のコンパクトなつくりだ。
不潔なイメージも覆された。大きなゴミが落ちていたり、家具に精液がこびりついていたり、といったことはない。ゴミ箱も交換済みだった。
さて、男が1人で外泊するときの快適ポイントは何か。独断だが、「気兼ねなく自慰できるか」「心地よく眠れるか」の2つだろう。
まずは前者。オカズは大量のタイトルから選んだAV。安ホテルのアダルトチャンネルとは比較にならない豊かさだ。
欠点は極端に壁が薄く、隣室ばかりか同じフロアにある8つほどの部屋の物音が筒抜けであること。しばらくAVを観てからズボンを脱ごうとすると、近くの部屋からけたたましいイビキが聞こえてきた。興ざめの極致である。
しかし、慣れとは恐ろしいもので1時間ほど経つと細かいことは気にならなくなってきた。もう一度、AVを観始める。よく考えると、僕の物音も周囲に聞こえてしまうのだ。ティッシュを抜き取る音さえも。これは恥ずかしいぞ。近くのおじさんは寝ていてくれたほうが好都合だ。
15分後、僕は目的を達成した。お茶を飲んで一息つき、「M1グランプリ」のお笑いDVDに切り替えた。口を大きく開け、声を立てないように笑いまくった。虚しいが楽しい。
深夜3時ごろ、眠くなった。狭いソファベッドで足を折り曲げて寝た。受付で借りたペラペラの毛布が意外と暖かい。途中、救急車のサイレン音を何度も聞いた。再び不安な気持ちになったが、いつの間にか眠りに落ちていた。
起きると朝10時を過ぎていた。体がちょっとだるい。隣室に神経を使ったり、足を伸ばせなかったせいだろう。
個室ビデオ店初体験の結論。翌朝に仕事があるときは、ある程度防音のしっかりしたホテルに泊まりたい。でも、休日前で終電車を乗り過ごしたなら、利用して節約する価値はある。