当初はロースクールを志願する人が延べ7万人を超え、その後も4万人前後で推移していました。しかし、80%程度と見込まれた司法試験の合格率は、新しい司法試験となった2006年時点ですでに50%を切り、その後も下がり続けて20%台の前半で低迷するようになってしまいました。これはロースクールでの教え方の問題なのか、あるいは学生の質の問題なのか、議論は分かれるところかもしれませんが、卒業後5年以内で3回落ちたら受験資格を失うという厳しい要件も足かせとなって、ロースクール人気はがた落ちしました。
実は司法試験をパスした法学部教員は少ない
当初は、夢だった弁護士になれるのではと多くの社会人が仕事を辞め、なけなしの貯蓄を取り崩してロースクールの門を叩きましたが、元々大学の法学部などで教鞭をとっていた研究者教員の多くは、法律の解釈に関しては詳しくても、司法試験に合格させるための知識やスキルを身につけさせるという指導には必ずしも長けてはいません。
私自身も法学部に17年間勤めていたのでその実態はよくわかっていますが、実は法学部の教員で司法試験に合格している人は少数派なのです。最初から研究者志望で司法試験を受けなかったという人もいますし、司法試験に合格することなく大学の教員になった人も少なからずいます。研究者教員でも学生の指導に長けている人はいるでしょうが、試験対策という側面からすれば、学生のニーズに合致していたとは言いがたいのです。
司法試験予備校が受験生に重宝されていたのには、ちゃんと理由があったのです。もちろん、ロースクールでは弁護士や現職の裁判官、検察官など実務家教員も配属されているので、このような経験者は学生にとって頼りがいのある存在であったことは間違いないですが、74校も乱立したロースクールの中には、残念ながらLow school(レベルの低い学校)という実態のところも少なくなかったでしょう。
自分の人生をかけてロースクールに進学した社会人で、試験に合格しなかった人の少なからずが、金を返せ、人生を返せ、と叫んでいるかもしれません。
たった15年で半分以上が廃校に追い込まれた
制度発足の2004年度には7万人を超えていた志願者も、2012年には2万人を切り、2016年には1万人を切るという極端な右肩下がりの状況が続きました。その結果、合格率の低いロースクールは学生も集まらなくなり、相次いで廃校となりました。姫路獨協大学のロースクールでは、2010年度の入学試験で合格者が1人もいなかったことが明らかになり、2011年度以降の学生募集を停止し、国内初となるロースクールの廃止を決めました。