「ユダヤ人以外を追い出すのは神聖な使命だ」
イスラエルが1967年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸地区とガザ地区、東エルサレムなどの占領を始めて半世紀が過ぎた。17年6月、ラマダン(断食月)最初の金曜日。エルサレム旧市街のイスラム教徒地区は、聖地の礼拝に訪れた人々で埋め尽くされていた。
約30メートルごとにある詰め所では、小銃を持った10人ほどのイスラエル警官がにらみをきかせる。一帯はイスラム教徒のパレスチナ人が多く住むが、イスラエル国旗を掲げた建物がちらほらある。近年増えているユダヤ人の割り込み入植者の家だ。
熱心なユダヤ教徒のメナヘム・ボルマセルさん(30)一家は5年前から、ここで暮らす。「旧市街には昔から神殿があり、ユダヤ人が住んでいた。ユダヤ人以外を追い出すのは神聖な使命だ」と話す。武装した警備員が24時間態勢で入植者の家々を守る。イスラエル紙「ハアレツ」によると、イスラエル政府は1990年代から旧市街を含めた東エルサレムへの入植者の警備費用を支出し、その額は入植者1人あたり年間約90万円に上る。
裁判で所有権を勝ち取り、入植者を増やす団体
エルサレム旧市街などで入植を推進するのが強硬派のユダヤ教団体「アテレト・コハニム」だ。幹部のアサフ・バルフィさん(41)によると、旧市街のイスラム教徒地区では約1000人のユダヤ人入植者が暮らす。
この団体は、イスラエルが建国された1948年よりも前に旧市街でユダヤ人が所有していたとされる物件を見つけ出し、居住者のパレスチナ人に売却を依頼。交渉がまとまらなければ、古い証拠書類をたてに裁判を起こして所有権を勝ち取る運動を進めている。こうしてユダヤ人の入植者を増やす計画で、「エルサレムの盾」と呼ばれている。バルフィさんは「300年かかっても、ユダヤ人が多数派になればいい。焦る必要はない」と言う。