もともとものを書くことは、高校卒業後に入学した専修大学の学生のころに少しかじったことがあった。ラジオの深夜番組にネタを投稿して賞金をもらったりしたし、落語研究会の友人に頼まれて落語の台本を書いたこともある。そのネタはどういうわけか早稲田の落研にいた学生落語の学生チャンピオンが演じていた。今では電波にのせられないような大学ネタで、日本体育大学や駒澤大学など各大学の特徴を皮肉った内容だった。


「おまえ、面白いなあ。それちょっと落語にしてよ」芸人「そのまんま東」誕生 …没頭していたノートづくり。いつしか内容が落語、漫才に変わっていた。ある日、友人の一人が“東国原のネタ”を面白がった。

題名は確か「日体大のさんま」だった。日体大の学生は電車に乗ってるときにつり革を見るとつい懸垂をしてしまうとか、駒澤大学の学生は電子レンジのチーンという音を聞くとついお経を読みはじめてしまうといったもので、普段からそういう話をしていたら、「おまえ、面白いなあ。それちょっと落語にしてくれないか」と頼まれてシナリオに仕立てた。のちに僕と大森のツーツーレロレロが漫才でやった学生ネタのルーツとなった作品だ。

県政をやっていると多岐にわたる分野に取り組まなければならない。しかも僕は、政府の「行政支出総点検会議」(無駄ゼロ会議)に委員として出席しているので未知の分野も多く、いろいろな人からレクチャーを受けている。そうした専門家の人たちの話を聞いて理解するコツは、要点をまとめながらノートを取ることと、自分の中で絵や映像として覚えることだ。たとえば無駄ゼロ会議であれば、各省庁が所管する公益法人や特別会計、不要な政策の「棚卸し」(見直し)など会議の柱について、まず自分なりに絵柄を描いてみる。そしてそこに関連する問題点は何であるかをチャートなどで関連づけ、覚えたりする。

とはいえ、僕の場合は1回で覚えることは不可能なので、まず1回目は忘れてもしかたがないと考えている。ただし自分の中で、2回、3回と、同じ作業を何回繰り返せるかがポイントだ。だから周りの人たち、特に県庁の秘書課の人たちは、僕から何回も同じことを聞かれるので大変だと思う。

僕は、知事に就任したときに、「私はわからないことがあったら、どんなにつまらないことでも尋ねていくタイプの人間です。疑問に思ったことがあったら、納得がいくまで追及します。こんなことも知らないのかとか、面倒くさい、ということをあまりおっしゃらずに、一から丁寧に説明していただきたい。今後どしどし聞いていくつもりです」という主旨のことを県庁の職員たちに話した。

(吉田茂人=構成 芥川 仁=撮影 ※写真キャプションは、そのまんま東著『芸人学生 僕が学びつづける理由』をもとに編集部作成)