缶やペット飲料の割合が大きくなれば市場は拡大する

90年代中頃、緑茶飲料は、当時「無糖茶飲料」と呼ばれていた市場カテゴリーにおいては、ウーロン茶やブレンド茶に比べて、市場規模としては三番手の位置でしかなかった。だが、そのときにあって、伊藤園は緑茶飲料市場の成長を信じていた。というのは、緑茶飲料の成長可能性を示唆する「飲料化比率」のコンセプトとセオリーを持ち始めていたからである。
「飲料化比率」とは、緑茶の全消費量のうち、缶やペットボトルなどに入った緑茶飲料として消費される量の構成比を表す指標で、次の式で表される。

飲料化比率=飲料容量(kl)÷(飲料容量(kl)+茶葉容量換算(kl))×100

つまり、飲料化比率とは、「缶やペットボトルの形で飲用された容量」と「茶葉でいれて飲用された推定容量」との合計に占める、「缶・ペットボトル飲料容量」の比である。

その比率は、96年当時は4%程度であった。茶葉が飲用される全量のうち、4%しか缶やペットボトル飲料にはなっていなかったのだ。この比率は、コーヒーや紅茶の10分の1にすぎなかった。その現実は、茶葉を急須でいれて飲む緑茶の需要を取り込むことで成長余地があることを示している。

そうした考えの背景にあるセオリーは、次のようなものだった。当時、同社は、「緑茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒーという4種類の飲み物がそれぞれどの程度飲まれているのか」という視点から市場規模を調べた。

消費量でみると一番飲まれているのは緑茶。次いで、コーヒー、ウーロン茶、紅茶。ところが金額で算出すると、市場規模はコーヒーが緑茶を圧倒的に上回っていた。この逆転はどこから来るのか。原料のコーヒー豆が緑茶の茶葉よりも高いのか、といえばそうではない。

理由は、コーヒー市場1兆4000億円あまりの売上高の3分の2の約9000億円は缶コーヒーとして消費されていたからだ。つまり、缶などの飲料として飲む比率の高さが、付加価値を生み出していたのだ。緑茶も、缶やペット飲料の占める割合が大きくなるほど市場は拡大する!