情報を「分類」するのは至難の業

整理法の本にあるもう1つの大きな間違いは、「整理は分類である」としていることです。しかし、分類とは思想です。思想によって分類は変わります。ですから、思想が変われば分類は変わるのです。

野口悠紀雄『「超」AI整理法 無限にためて瞬時に引き出す』(KADOKAWA)

分類についてのもう1つの問題。ある対象は、通常、複数の属性を持っています。コウモリは空を飛ぶから鳥と同じグループです。他方で、哺乳類でもあります。では、コウモリは「空飛ぶ動物」に分類すべきか、「哺乳類」に分類すべきか?

情報については、この類いの「コウモリ問題」があるので、一義的に分類できないのが普通です。これが情報とモノとの違いです。

モノは分類しないと取り出せません。スーパーマーケットでミカンとボールペンを区別して置かなければ、客はどこに行っていいか分かりません。しかし、情報はこれと違います。

では、どうしたらよいのでしょうか? 「ある文書が複数の属性を持っているなら、いくつもコピーを作って複数のフォルダに入れよ」と言っている人がいました。冗談ではありません。そんなことをやっている暇はありません。

無駄な分類整理をしない「押し出しファイリング」

以上の問題に対する答えとして『「超」整理法』で提案したのが、「押し出しファイリング」です。

この整理法では、まず、本棚に一定の区画を確保します。本が詰まっていれば、どけます。そして、角型2号の封筒(332ミリ×240ミリ。A4判の書類が楽に入る封筒)を大量に用意します。それから、筆記用具を準備します。

机の上に散らばっている書類などを、ひとまとまりごとに封筒に入れます。このまとまりを、「ファイル」と呼ぶことにします。封筒裏面の右肩に日付と内容を書き、封筒を縦にして、内容のいかんにかかわらず、本棚の左端から順に並べていきます。

この方式のモットーは、「分類するな。ひたすら並べよ」ということです。以後、新たに到着した資料や書類は、同じように封筒に入れて、本棚の左端に入れます。取り出して使ったものも、元の位置に戻すのではなく、左端に戻します。

このような操作を続けていくと、使わなかった封筒は、時間が経つにつれて次第に右に押し出されていきます。このために、私はこの方式を「押し出しファイリング」と名付けました。