イランを敵視しているイスラエルは間違いなくアメリカに同調する。しかし、やっとのことで総選挙に勝利した右派ネタニヤフ政権は盤石ではなく、汚職スキャンダルに揺れている。イスラエルはハマスなどのパレスチナ武装組織との戦いは得意だが、越境して空爆したなどの例外はあってもイランと直接戦争したことはない。対イランとなるといくつかの国が中間にあるので構えるところがあるのだ。従って、イスラエルがアメリカと組んでイラン相手にドンパチやるシーンは考えにくい。

周辺国でいえば、アメリカから武器を大量に買っているサウジアラビアは一貫して「金持ち喧嘩せず」を貫いてきた。従って、後方支援に回ることはあるだろうが、直接前面に出るとは考えにくい。米軍が駐留するイラクもイランとの開戦を望んでいない。イラク領内にはイランが支援するシーア派民兵が多数入り込んでいて、アメリカとイランが激突すれば、再びイラクが戦火にさらされる危険性が高い。せっかく安定してきたイラクがまた不安定化しかねないということで、米国内ではイラン攻撃を回避させるためのロビー活動も盛んに行われている。

1979年に起きたイラン革命はシーア派の宗教指導者ホメイニ氏による宗教革命だったが、これを嫌って国外脱出した人々が大勢いた。アメリカに逃げてきた人もいる。彼らは比較的インテリが多く、米国内で一定の影響力を持っている。アメリカにもイランにシンパシーを持っている人がそれなりにいるのだ。

再選が最大関心事のトランプ大統領はそうした国内情勢に目を配っているし、自らの大統領選にとって対イラン戦争が長引くのは得策でないこともわかっている。トランプ大統領の腹の内は「戦争回避」なのだ。実際、「イランと戦争しようとは思わない」「前提条件なしで協議する用意がある」と公言している。

北朝鮮も米中対立もチープなドラマ

トランプ大統領は戦争になった場合、「かつて見たこともないような完全破壊が起きる」「ANNIHILATION(国家の消滅)」という、あまり外交では使わない過激な言葉を用いてイランを牽制する。こうした相反する言動も、トランプ流の劇場(激情)型政治ととらえると理解しやすい。

トランプ大統領といえば実業家時代にテレビのリアリティ番組のホストMC兼プロデューサーをしていたことで知られる。複数の番組参加者が課題に挑戦して、最後の5分で番組ホストのトランプ氏が1人の脱落者を指名する。そのときの決め台詞が「You're fired(お前はクビだ!)」だ。