年間1500件をこなす審判員の派遣団体

「ビートたけしのスポーツ大将」(テレビ朝日系)というテレビ番組がある。ビートたけし(北野武)とナインティナインが、「水泳、ゴルフ、野球、サッカー、卓球など多彩なオリンピック種目で、2020年東京五輪でメダルを狙う天才キッズ発掘」を掲げる番組だ。

同番組の野球編・収録で審判員を務めるのが「関東審判倶楽部(KUC)」という団体だ。代表は渡辺信雄氏(1977年生まれ)で、2007年に30歳で前身の団体を設立。草野球の試合を中心に活動を広げて、各試合に審判員の派遣業務を担う有力団体に成長した。

設立以後、渡辺氏が10年余り、家業やサラリーマン活動のかたわらで運営してきたが、審判員の派遣依頼が激増したため、2018年に独立。「一般社団法人アスリートフィールドネットワーク」(AFN)も設立し、AFNでは各種野球大会の主催、大会記念グッズ、チームユニフォーム販売などの事業を行う。設立から間もないが、企業とのコラボ企画も増えている。

KUCに所属する審判員は約30人で、平均年齢は40代前半。各野球チームから審判の派遣依頼があると、手配して試合会場に派遣する。突然の派遣依頼は、SNS人脈で急募する。

「チームからの依頼が年々増えて、昨年は約1500件の派遣依頼がありました。専属の審判員も4〜5人いますが、大半は他の連盟などと掛け持ちする審判員。ふだんの業務は製薬会社の営業マンやシステムエンジニアなどホワイトカラー職種が多く、週末中心の稼働です。とはいえ平日の試合依頼もあるので、一定の技術を持つ人の確保が大変です」(渡辺氏)

プライドジャパン甲子園審判部のメンバー。KUC審判員からは6名が参加した(画像提供=関東審判倶楽部)

審判の需要を掘り起こした

KUCが脚光を浴びたのは、前述した伝統団体が主催しない、草野球の大会や親善試合の審判員需要を掘り起こしたからだ。それまで地道に続けた試合運営の技術と機動性が評価されて派遣件数が増加、それにテレビ出演が加わり「仕事が仕事を呼んだ」。

野球競技人口の減少にともない、草野球も全盛期ほどの活気はない。企業現場のレクリエーションとしても、たとえば工場の昼休み時間にキャッチボールをする姿は(安全性なども理由があるにせよ)、ほとんど見なくなった。

そうした“縮小市場”でも、KUCに派遣依頼件数が殺到するのは興味深い。現在の草野球が定着したのは昭和の高度成長期以降で歴史は半世紀を超え、審判団体もあるが世代交代が進まなかった。そんななか、当時30代の代表が運営する若い団体が人気となった。