「試合はやり尽くした、未練はない」

神奈川県相模原市出身の渡辺氏は、高校時代まで選手として活躍し、その後に草野球チームに入り、選手や監督として活動した。多い年では年間230試合もこなしたという。

「そこまで試合をやり尽くしたので、選手への未練はありません。以前は自分が前に出たいタイプでしたが、今は一歩引くことも覚えました。本業も年齢もさまざまな審判員を各地に派遣するといった、“ヒトを動かす”仕事の醍醐味を味わっています」(同)

全国から1000もの軟式野球チームがトーナメント制で戦う「プライドジャパン甲子園」という大会もあり、中小のスポンサー企業が支援する。渡辺氏は同大会の審判長を務める。

プライドジャパンカップ・ナゴヤドーム大会決勝で審判を務める渡辺氏(画像提供=関東審判倶楽部)

立ち仕事で「1日6試合」をこなす時も

アマチュア野球の審判員は「好きでないとやれない」(関係者)世界。最大の理由は報酬の低さで、球審や線審で1試合を担当して7000円が相場だ。試合会場でチームから現金支払いが多いが、雨天中止では報酬が出ない。会場までの往復交通費も自己負担が多い。

専門性や技術が必要な割に低額なので、収入の柱を、他の業務で担う人が大半だ。

粟村哲志氏(1975年生まれ)は審判員歴20年。現在は個別指導塾の講師を行いながら審判業務を担う。複数の団体に所属し、KUCの試合も担当する。同氏のスケジュールは慌ただしい。2018年6月の日曜日のある日は、以下のような分刻みだった。

・6時30分 都内の自宅から自家用車で「大井ふ頭中央海浜公園」に到着
・7時~8時50分ごろ 単発の1試合を担当(同公園E面グラウンド)
・9時~11時 草野球「埼京リーグ」の1戦目を担当(同A面グラウンド)
・11時~13時 同リーグの2戦目を担当(A面)
・13時~15時 同リーグの3戦目を担当(A面)
・15時~17時 同リーグの4戦目を担当(A面)
・18時~21時 別の単発で3時間ゲームを担当(同C面グラウンド)

「埼京リーグ」の4試合は、全試合が時間切れの終了となり、終了と同時に20分間でラインの引き直しと水まきをし、残りの100分で審判を担うことを繰り返したという。

「結局6時半頃現地入りして、21時半ごろ退去するまで15時間、大井ふ頭中央海浜公園で6試合審判しました。17時までの5試合は切れ目なく試合が入り、トイレに行くことも座ることもできず、ひたすら立ちっぱなし。さすがに疲れました」(粟村氏)

当日の報酬は総額で約3万円だったという。別の日は、9時20分から12時30分まで個別学習塾で2コマ担当した後、練馬区に移動して、15時から17時まで草野球を1試合。さらに移動して府中市で19時から21時まで1試合を担当した。