迷ったら、やる

結果から言うと、展示会は大成功でした。展示会中にたまたま通りかかったWEBニュースサイトの記者の方が興味を持ち、10ページくらいの記事にしてくれて、それがきっかけとなり、『笑っていいとも!』や『はなまるマーケット』などのTV番組からも取材依頼がきました。

甲冑パンツは8800円(税抜き)もする高価な商品ですが、発売後1年間で1万6000枚くらい売れました。それで会社はなんとか息を吹き返したのです。

私が常に思っているのは、「迷ったら、やる」です。

「すごくお金がかかるなあ」「これって、やる意味あるのかな?」

ビジネスには常にこのような懸念材料がつきまといます。だけど、「どうしようか迷っているということは、やりたい気持ちが少なくとも50%はある。それならやってみんかい!」と、私は自分に言い聞かせています。

なぜなら、本当にやるべきではない時は、考えるまでもなく一切迷わないから。これは直感に従うこととも似ているのですが、結局のところ、「やりたい」と思っている時は無意識のうちに好材料を探していますし、「やらないでおこう」と思っている時は悪い材料を探しているのです。

世界的ソロ和太鼓奏者の林田ひろゆきさんによって行われた「包帯の陣」当日の和太鼓パフォーマンス

魂は燃えているか?

つまり、材料の良し悪しでやる・やらないを決めるのではありません。「私の魂がやりたがっているか・やりたがっていないか」が、すべてにおいて先行するということです。これ、全然ロジカルではないですよね。経営者としてほんまにそれでええんかという声も聞こえてきそうです。

でも、どんなビジネスであっても「自分の魂が燃えているか、燃えていないか」が、その成否を決める鍵だと思うのです。すなわち、燃えている=やりたがっている、燃えていない=やりたがっていない。

最初から魂が燃えないのは論外ですが、「かつては燃えていたのに、今は鎮火しそうになっている」こともありますよね。要は、魂が「冷めてきた」状態です。そんな時、そのビジネスを今後も続けるかどうかは、「もう一回、火勢を取り戻せそうか」にかかっています。

野木志郎『日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由(ワケ)』(あさ出版)

私は、すでに消えてしまっている火を、改めて点火する必要はないと思っています。

なぜなら、本物の火と同じで、少しでも火が残っていれば、再び強い火勢に戻せる可能性はありますが、一旦完全に消えてしまった火をもう一度おこすのは、すごく大変だから。

火は、消すのは簡単。つけるのが一番むずかしい。だから、一旦火がついたのなら、それはとことん大きな火にすべきだと思います。

私のビジネス判断の基本ルールを極限まで突き詰めてみると、たぶんこんなんです。単純すぎますか?

野木志郎(のぎ・しろう)
ログイン 代表取締役社長
1960年、大阪府高槻市生まれ。立命館大学法学部法学科卒業。87年株式会社千趣会入社。新商品、新規事業を中心に担当する。2002年に父親の会社「ユニオン野木」へ。その後「包帯パンツ」を開発し、06年にログイン株式会社を設立して独立する。包帯パンツは19年1月現在、世界で130万枚を売上げ、世界的なシェフ・松久信幸(NOBU)氏やロバート・デ・ニーロ氏など、国内外の著名人にも多くのファンを持つ。
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