「シルクスクリーンの仙人」との出会い
課題は一度断念しかけていた包帯素材へのシルクスクリーン印刷。包帯は通気性が高いメッシュ調。普通にプリントすると裏まで抜けてしまう。この技術の改良に本当に時間がかかりました。まずプリントできる工場がない。あっちこっちに問い合わせをして工場見学に行き、交渉しました。
そんなある日、岐阜に在住の「シルクスクリーンの仙人」と呼ばれている方(マンガのような話ですが、本当です)にたどり着いたのです。そしてテスト印刷をしてみたら大成功!! こうして甲冑パンツは完成しました。
では、この魂のこもった商品をどうやって世に出すか? それで思いついたのが、東郷神社です。
きっかけは、ユナイテッドアローズの重松理社長(現在は名誉会長)に会いに行った帰り道。原宿を歩いていて東郷神社の前を通りかかった時、ふと思ったのです。
「あ、ここでやろう」
深い考えはありません。和風のデザインだから、神社。その程度です(笑)。
さっそく、イメージを膨らまし展示会風景のイラストを描き、東郷神社にプレゼンに行きました。
しかし、当初先方の総務部長さんは困り顔。「ファッション関係の企画は通った試しがないんです、山本寛斎さんの企画ですらお断りしているので、99.99%無理です」
なけなしのお金をはたいた「ド派手なイベント」
しかし私の熱意が通じたのか、総務部長さんがカラーで作った企画書をあえて白黒コピーにすることで「ド派手な下着の企画」のイメージを地味に仕立て、検討の俎上に載せてくれました。
すると、なんとその日の夕方に「企画が通りました。宮司が面白い、やってみなさいと言っています」との連絡が! もしかすると軍人だった東郷平八郎元帥を祀(まつ)っているだけに、「甲冑」と相性が良かったのかもしれません。総務部長さんの機転にも感謝です!
そこから半年の間、私は必死に準備しました。
たくさんのデザインパターンを用意してアイテム数を揃え、『七人の侍』風の発表会用の曲をこのためだけに作曲してもらい、凝った照明を手配し、世界的ソロ和太鼓奏者の林田ひろゆきさんに当日の和太鼓パフォーマンスもお願いしました。当然、お金はめちゃくちゃかかります。
実は私はログインの創業資金として、銀行から借りられるだけのお金をめいっぱい借りていたのですが、そのなけなしのお金の大半を突っ込んでしまいました。
創業資金をド派手なイベントにつぎ込むなんて、正気の沙汰ではありません。博打(ばくち)もいいところ。でも、私はどうしてもやりたかった。やるべきだと思ったのです。