「労働者の4割」非正規社員にボーナスが支給されないワケ
実際には中小企業の40%、非正規の56%はボーナスを支給されていない。0円だ。つまり大多数の労働者にとってボーナスの恩恵を受けて、毎夜のごとく忘年会で浮かれている光景はまったく関係のない世界なのではないか。
非正規社員の中には金額がわずかでもパートや契約社員でもボーナスが出るんだと驚いた人もいるかもしれない。本来のボーナスは会社の業績によって増減し、長年勤務する社員の生活費の補てんとして支給される性格を帯びていた。
しかし、非正規だけは埒外とされていた。
なぜなら非正規は業務の繁閑に応じて臨時的・一時的に雇われ、契約期間も6カ月や1年と限定されていたからだ。そのため事前に交わされる雇用契約書に「賞与支給」を記載することはほとんどなかった。
だが、非正規の雇用実態は平成の30年間で大きく変わった。平成元年にあたる1992年の全体の雇用者数に占める非正規比率は21.7%にすぎなかったが、年々増加し続け、今では40%にまで膨れあがっている。
しかも1年契約といいながら更新を重ねて同じ会社に5年、10年と長期に勤務する人も増加した。その背景にはバブル崩壊後に企業が長期低迷に陥り、正社員を減らし、コストの安い非正規で代用する状態が長く続いたことがある。
非正規にボーナスを出している外食チェーンの言い分
そうしたなかで非正規にボーナスを支給しようという企業も徐々に登場するようになる。10年前からボーナスを支給している物販・外食チェーンの人事部長はその間の事情についてこう語る。
「1990年代は正社員がほとんどを占め、補助的に主婦のパートさんを使っていましたが、上からコスト削減を強く言われ、正社員が辞めると代わりに契約社員を雇うようになりました。本来なら優秀な人は正社員にするのですが、1年後、2年後に業績がどうなるのかわからないという危機感もあり、正社員を雇うのではなく契約社員への切り替えが進み、徐々に増えていきました。店舗ではフルタイムもいればシフト勤務のパートさんもいるなど非正規が主力になっていったのです」
「しかしボーナスは、正社員は出るのに非正規は出ません。もともとそういう契約になっていたので非正規の人たちも口に出して文句を言う人はいませんでしたが、ボーナス時期になると見ていてどこか元気がない感じになるのを気づいていました。皆さんやはり不満を持っていたのです。そこで人事から社長に意欲を持って働いてもらうには少しでもボーナスを支給すべきだと、進言したのです」
同社の場合、勤務年数に応じて支給するようになり、勤続10年の人は年間20万円だという。正社員よりも低いが、それでも他の非正規社員よりは恵まれているといえる。