「死刑囚ドナー」を続ける中国は信用できない

臓器移植をめぐっては、世界的なドナー(臓器提供者)不足といわれるなかで、中国はアメリカに次ぐ「移植大国」となっている。「あの中国が?」と驚く方も多いと思うが、死刑が年間数千件も実施されているといわれる中国では、死刑囚がドナーになっている。いわゆる「死刑囚ドナー」である。死刑囚を故意に脳死にしてその体から心臓や肝臓、腎臓などを取り出してはレシピエント(患者)に移植するのだ。

中国の死刑囚はこれまで思想犯が中心で、若くて健康な者が多かった。欧米や日本のようにいつ現れるか分からないドナーを待つのとは違い、死刑囚だと日時や場所が選べ、移植までの段取りがスムーズに運べる。

世界中でドナーが不足しているなか、中東やアメリカの資産家らが多数、臓器を求めて押しかけている。中国側はもっぱら外貨稼ぎが目的で、たとえば心臓には、末端価格で数億円の値が付く。

中国は2007年に臓器移植法を施行している。その法律にはドナー本人やその家族から臓器提供の同意を得ておくことや臓器売買の禁止などが盛り込まれた。国際世論から強い反発を受けた死刑囚ドナーについても中止する方向性を示した。

「死刑囚本人から同意も得ている」と正当化

しかし中国の臓器移植を調査してきた専門家は、中国の死刑囚ドナーは続けられていると見ている。なぜなら世界的にドナーが不足しているにもかかわらず、発表されているだけで年1万~1万5000件の臓器移植が行われているからだ。しかも臓器移植の待ち時間は数日から数週間と非常に短いという。

中国は死刑囚ドナーの存在について、「死刑囚は中国社会に害をもたらした。だから臓器の提供は最後の償いだ。死刑囚本人から同意も得ている」と正当化してきた。

しかしその同意がどこまで正当に得られたものかは不明だ。また死刑囚という特殊な環境下での「同意」は真の同意とはいえない。どう中国が主張しようと、倫理的かつ人権上の問題はなくならない。

この死刑囚ドナーに対し、WHOや欧米、それに日本の移植学会は反対の意思を示している。

死刑囚ドナーに限らず、中国という国には人の命を軽視し、事実を隠蔽して自分たちに都合よく解釈し、それを国際社会に訴えようとする傾向が強い。

その中国が賀氏のゲノム編集ベビーに関しては「国家の法と規則に違反した」と批判し、「研究を止めさせて事実関係を調査する」といい出した。本当だろうか。何か裏でもあるのではないだろうかと疑ってしまう。今後の中国の対応に目を光らせたい。

(写真=AFP/時事通信フォト)
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