0.6%の塩分でも満足できる断捨離スープ

調理の基本は鍋一つ。使う食材は旬の野菜、味を補う肉や魚介、それにオイル、水、そして最低限の調味料です。

そもそも、うま味は、かつおや昆布、鶏ガラなどでとる特別な「だし」だけに含まれているわけではありません。肉や魚、昆布だけでなく、白菜でもキャベツでもニンジンでもタマネギでも、どんな食材にも多かれ少なかれ「だし=うま味」は含まれています。

なかでも、その野菜本来の育つ季節である「旬」の野菜の場合、そのおいしさは他の季節とは比べ物になりません。その旬の野菜をメインにたっぷりと使い、少しの細切れ肉やひき肉を合わせるだけで、ぐっとコクが増して十分に満足感が高くなります。

このとき大事なことは、「素材本来の味を最大限に生かしきること」。そのためにはあれこれと調味料を追加するのではなく、むしろ不要な調味料はなるべく引いていくほうが効果的です。いわば料理の断捨離です。野菜の味そのものの味が感じられるように仕上げると、不思議なことに調味料をあれこれ入れるよりもうま味が感じられるのです。

通常、人がおいしいと思う塩分濃度は、人の体の生理的食塩濃度である0.9%前後と言われていますが、旬の野菜を中心に具材を煮込んだスープには0.6%ぐらいの塩分でも十分においしいと感じられるものもあります。

「白菜の塩しょうがスープ」。塩のみの味つけだが、少しのひき肉としょうがの香りで満足感は高い(撮影=筆者)

野菜のうま味を生かしきることがコツ

シンプルスープでは、素材のうま味の引き出し方が重要です。

多くの人はスープを作るとき、沸かした湯にコンソメキューブを加えて溶かし、切った野菜を入れて煮ているようですが、これでは野菜特有のにおいや雑味が、うま味を感じるときの邪魔になります。おススメは、炒めてから煮る、あるいは蒸し煮してから煮る、という方法で、どちらも鍋一つで済みます(鍋はなるべく厚手の、ふたのついたものが最適です)。

野菜からの水分で汗をかかせるように火を入れていき、甘いにおいに変わったら水を加える。たったこれだけのことで、水にいきなり野菜を入れて煮るのとは、まったく違う野菜のうま味を感じられるようになります。食材を煮込む前に少し焼きつけて、さらに美味しさを生み出すことも可能です。カレーのあめ色タマネギはその例ですね。

また、野菜を大ぶりに切ったり、逆に細い千切りにして食べごたえを出したり、スープに片栗粉や小麦粉でとろみをつけて舌の逗留時間を長くすることで、薄味でもおいしく食べることができます。

いずれも、難しいテクニックではなく、料理の初心者でもごく普通にできることばかりです。

焦げに含まれたうま味を利用する「焦がしキャベツのスープ」。これも味付けは塩だけ(撮影=筆者)