仕事人生の前半戦で「ゲームオーバー」する人々
40代の後半で「あなたはここまでですよ」と言われてしまうことの悲惨さは、今後、おそらく社会的と言っていい重大な問題を生み出すことになるでしょう。
なぜなら、おそらく近い将来にやってくる「人生100年時代」では、40代後半というのは、いまだ折り返し点にもいたっていないキャリアの前半戦に過ぎないからです。
従来の仕事人生、つまり20歳前後まで学習、その後就職して60歳前後まで仕事、その後は引退するという「3ステージモデル」を前提にすれば、四十代後半でレースから降りたとしても、残りの10年プラスアルファを引退への準備期間として甘んじて受け入れることができたでしょう。
しかし、人生が100年になんなんとする時代においては、40代後半というのは、キャリアの折り返し点にもいたっていない可能性がある。
自分の仕事人生がこれからまだまだ続く、いやむしろ、いよいよこれから実りが得られるという「旬の時期」の前に、「あなたはここまで」と言われながら、別のキャリアを探そうにもどうしようもない、そういう状況に陥る人が多数生まれてくるのです。
これは間違いなく大きな社会的混乱を巻き起こす要因になると思われます。
人生は「3ステージモデル」から「4ステージモデル」へ
この問題を考察するにあたって、予防医学者の石川善樹が提唱する「人生を四つのステージに分けるコンセプト」を引いてみましょう。
すなわち、春に当たるファーストステージの0~25歳は、基礎学力や道徳を身につける時期、夏に当たるセカンドステージの25~50歳は、いろんなことにチャレンジし、スキルと人脈を築くとともに、自分はなにが得意で、なににワクワクするのかを見つける時期、そして秋に当たるサードステージの50~75歳は、それまで培ってきたものをもとに自分の立ち位置を定めて世の中に対して実りを返していく時期、そして冬に当たるフォースステージの75~100歳は余生を過ごす時期、というモデルです。
これはロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・グラットンも指摘していることですが、私たちは長いこと3ステージモデルに慣れ親しんでいるため、どうしても60歳程度で引退し、80歳程度で亡くなるということを前提にして考えてしまいがちです。だからこそ「四十代後半で多くの人がゲームオーバーになる」という現在の慣習について、消極的ながらも受け入れている。