逆に会社側は、従業員に対して様々な選択肢を持つ、つまり煮て食おうが焼いて食おうが、どうしてもいいということになり、経済学的にいえば、雇用者と被雇用者のあいだで極端なオプションバリューの非対称性が生まれてしまうことになります。

外資系なら早い段階で仕事の向き不向きが分かる

山口周『劣化するオッサン社会の処方箋』(光文社新書)

一方でよく「厳しい、厳しい」と言われる外資系企業について考えてみると、そのとおり、確かに短期的には厳しい側面もあるかも知れませんが、中長期的に考えてみると違う風景も見えてくる。というのも、キャリアの若い段階で仕事の向き・不向きがはっきりするわけですから、結果的には自分のオプションバリューが増えるわけです。

これはシリコンバレーの経済システムと同じで、要するに全体・長期の反脆弱性の高さは、早めにたくさん失敗するという部分・短期の脆弱性によっている、ということです。

もちろんその瞬間はとても辛いものがあります。誰だって「君のパフォーマンスは会社の期待を満たしていません。来週から来なくていいので転職活動を始めてください」と言われれば大変なショックを受けます。筆者自身もそのように言われたことがありますし、昨日まで一緒に働いていた人がそのように言われて会社を去っていくのもたくさん見てきました。

日本の大企業の人からすると、そういうのは耐えられない、ということになるのかも知れませんが、結局のところ「あなたはここまで」と言われる年齢が早いか遅いかだけの問題であって、であれば、まだほかの道を選択できる若いときに言ってもらった方が本人のためだという考え方もできます。

組織が大きくなるほど出世の確率は下がる

さらに指摘を重ねれば、企業が大きくなればなるほど、重職に出世できる確率は低くなります。当たり前のことですが、どんなに大きな会社であっても社長は基本的に1人です。エグゼクティブの総数もせいぜい20人程度でしょうか。

つまり、その組織のなかにいて人の羨望を得られるようなポジションにつける確率というのは、組織が大きくなればなるほど低くなるわけです。